VOW WOW 再結成でも話題! 山本恭司 ロングインタビュー!

これほどまでにソロのみならず
多彩なライブ活動を展開して
国内外を飛びまわるとともに
定期的に新作を届けてくれる
レジェンドギタリストは
もはや世界規模でも珍しいのでは!?

VOW WOW再結成でも大きな話題を呼んだ
山本恭司やまもときょうじ による2023年末のインタビュー
ソロアルバム『MINDPOWERS』の
制作エピソードをたっぷりと掘り下げる!

インタビュー/バディットマガジン編集部

【Long Interview】 山本恭司 Kyoji Yamamoto

自分を解き放って やりたいことをやろうよ っていうメッセージ

近年も恭司さんは実に多彩な音楽活動をされていますが、
中でもアルバム『THE HARMONY OF 57 STRINGS』には驚きました。

バイオリンとハープとエレキギターっていうね(笑)。
(バイオリニストの辺見康孝、ハープ奏者の松村多嘉代によるデュオ)X[iksa](イクサ)の
二人が拠点としているお店(スタジオX[iksa])が、
僕の松江の実家からそれこそ歩いて何十メートルというか、同じ町内なのね。
バイオリンの辺見くんに相談して最初に手伝ってもらったのが、
東日本大震災のチャリティーで制作した
Inori Rebuilding Lives』(2012年)を作ったときだった。
それから10年ぐらい経って
なんか一緒にやれたら面白いかな、みたいな話があって。
ちゃんと一回ライブをやってみたらすごくうまくいったんです。
翌年もやって、三、四回やったら“これは音源に残すべきだな”と思って。
彼らは松江にいて、僕は関東にいての離れてのレコーディングだったんだけど、
テンポやアレンジのこととかをメールでやり取りして…。

えっ!? 『THE HARMONY OF 57 STRINGS』ってバラ録りなのですか!?
てっきりライブな録音だったのかと…。

それまでに一緒に演奏しているので、
だいたいのことはわかった上だから(笑)。
いざレコーディングするときに、
改めて“ここはヴァイオリンでメロディ、
ここはギターのメロディでそんな風にしたいんだ”みたいな
アレンジをやり取りをして。
バイオリンとハープのファイルを送ってもらって、
それに対してまた僕もリクエストを出したり、
ちょっと録り直してもらったり。
ギターを弾く上で、クリックを聴きながらやるわけでもないので…。

こういう演奏だとそれはそうですよね…。

一部クリックを使ったのもあるけど基本的に聴かずに演ってる。
だからどうしても“ここはこう延ばしたい”とか出てくるんですよ。
そこはもううまく自分のテンポでできたときに、
エディットで延ばしたりしていて。
そういったところに関しては結構今までで一番苦労したかもしれない。
送られたものでそのまま合わせると、
どうしても自分の気持ちに合わなかったりするから。
弦楽三重奏みたいなものなんで、
一緒に演っていると息を吸ったりしたタイミングで
次のことを演ったりするんだけど、
そこは想像でしかないから。
だからそこは絶対聴いている人の違和感がないように、
でもあくまでも自分の呼吸が自然に入って出るように、
現代のテクノロジーの力も借りつつ苦労してやった(笑)。
単純に切って貼っているわけじゃないから、
あるところはもうタイムストレッチをして延ばしてね。
あとは向こうは生の楽器をマイクで録っているから、
やっぱりアコースティックの響きって
それだけで本当に奥行きのある、すごく深い音がしててね。
僕もエレキギターでの響きを追究しているものの、
やっぱりライブではうまくいってても、
いざレコーディングしてみるとね、
音が浮いたりして溶けあわないの。
最初例えばフラクタル(オーディオ・システムのAxe-FxⅡ)でやってみて、
なんかうまくいかなくて、
久々にヒュース&ケトナーTriAmpを持ち出してやってみて、
でもまたフラクタルに戻したりとかいろんなことやって…
だから『THE HARMONY OF 57 STRINGS』は
わりとアンプの音がメインだけど、結局はフラクタルも使ってる。
でも結果的に僕が求める音と引き出そうとする音は一緒なので、
今音源を聴いてもどっちだったかわからないぐらいになっているんだよね。
だからいざミックスに入ってからの苦労がね、一番大変だった。

仕上がりがすごくライブな感じなので
そこまでしていたとは逆に聴こえないです…。

だよね。もう最終的にはナチュラルで、
自分でも本当にめちゃくちゃ美しいものに仕上がったとは思ってます。

かつてのソロアルバム『TIME』でのハープの音は音源だったと思うのですが、
今回はそれが生で具現化されていたのは感慨深かったですね。

キーボードで白鍵を弾いてたものね(笑)。

『TIME』(2009年)のときに僕がPlayerの編集部に配属されて、
恭司さんが記念すべき初めてのインタビュー取材でした。

そういうハープのことを覚えていてくれたんだね!
元々やりたい世界観がたくさんあって、
今回もそうなんですけど、
どんどんとその理想の音が本当に具現化できるようになってる。
演奏技術的な部分もそうかもしれないけど、
やっぱり音源のテクノロジーとかそういうのも大きいよね。
例えばアルバム『2020』で録ったときも、
良い音ができたらなと思ったらそれをテンプレートとして取っておく。
ドラムのセッティングからギターのEQ、コンプの設定も全部とっておくんだけど、
新しい曲を作ってそのまま使うと
“もうなんでこんな音なの!?”って絶対になっちゃうんだよね。
だから今回も結果的にドラムもEQも全部作り替えた。
だから今回の『MINDPOWERS』に関しては、
また新たな迫力のある、よりクリアな音にすることができたので満足しています。

久々にロックバンドサウンドの作品になりましたね。

久々だね、こういうのは。もうロックがあるわけですよ。今回は。

『HOPE IS MARCHING ON』(2021年)には
オーケストラ作品を手掛けられたことで
ストリングスアレンジの生々しさが一層発展したような感じもしますし、
結局いろいろとやってきたことが
『MINDPOWERS』に集約されている感じがあります。

もう昔のソロアルバムから…それこそ『TIME』とか
オーケストレーションをするのが好きだったから。
それこそエレキギターのロックインストにハープとかチューブラベルズとか、
そんな感じでホルンも入ったりしてたからね。
昔から自分の頭の中ではそういう音は鳴ってたんだよね。
TIME』の「Rapid-fire」というめちゃくちゃ速い曲でも、
あの速いパッセージをあえてオーケストラと一緒にやってみたら、
すごくかっこよくてもう大喝采を受けたんだよね。
初期のBOW WOWにはキーボードもいなかったけど、
シンフォニックロックなんて言葉が流行る前に、
シンフォニックなロックをやっているような気持ちでもいたし、
オーケストレーションみたいな感じまでいかなくても、
バンド単位で小さなオーケストラみたいなのを考えていて。
しかもソロになるともっともっと楽器を自由に自分で選んで全部使えるので、
表現の自由を前以上に感じ始めてね。
今回の『MINDPOWERS』にしても、
めちゃくちゃシンプルにギターとコードみたいな「Uranus」もあれば、
ロックっていうのを強調した「The King of Salamanders」とかも入れたくはなるんだけど、
いつでもオーケストラが使えるという自由さと余裕があるのはいいですね。
そういった気持ちでいつも作ってます。

ここ何年かの作品と比べて、
今回のアルバムは『TIME』の頃を思い出すような
王道のギターロックアルバムと感じたのですが…コロナの影響もありますか?

それはあると思うよ。
僕はアルバムっていうのはただ作品というだけじゃなくて、
写真のアルバムみたいに
その時代時代を切り取ったものだという意味を持つと思ってる。
『2020』は2020年に起きた色んな事を題材に曲を作っていたけど、
その次の年の2021年に作った『HOPE IS MARCHING ON』は、
やっぱり希望に縋ろうとしてたと思うんだよね。
あの時はもうライブから何から制限されまくっちゃって、
でもやっぱり希望は持ちたくて。
だからその時は、癒されたいっていう気持ちと、
何か希望が見えることに繋げたい気持ちがあったね。
で、今回は完全に解き放たれた感いっぱいになっちゃって(笑)。
2曲目の「Let It Loose」は“解き放て”という意味だし、
タイトルに“Open”がつく「Open Your Mind」「Open Doors」にも
“前に進もうよ”“遠慮なく進もうよ”っていう感じがある。
それが今の気持ちなので、そういう曲が揃ってきたんだろうね。
だから、前に戻ったというよりも、
自分自身をニュートラルに出せるようになった感じかな。
制約の中で希望に縋るんじゃなくて、もうやりたいようにやるからって。
この2〜3年、みんな閉じこもって行きたいところも行けず、
やりたくもないマスクをしたりワクチン打たされたり、
そんな目に遭ってたじゃない。
もうこの年齢になると、やりたいように生きるべきだって気持ちが強くなって。
自分の人生なのにみんな“右向け右”に揃っちゃうのは馬鹿みたい、
そんなのやめろよ、という気持ちもある。
昔から反抗少年だったので(笑)。
だから今回のアルバムには“自分を解き放ってやりたいことをやろうよ”
っていう僕のメッセージが表れてるんじゃないかな。

Timeless CD TIMELESS-0009 3,500円 (税込)

3人が集まると すごいことができるっていう 久しぶりの感触がありました

僕、1曲目の「Open Mind」を聴いた時に
すごくVOW WOW を感じたんですよ。

それよく言われるんだよね(笑)。
厚見玲衣の影響があるかもしれない。
明るいキーボードが入っててね。
6月に出るVOW WOWセルフカバーには皆んなびっくりすると思う
(※6月27日に『SELF COVERS Vol.1』)としてリリース)

2020年頃だったと思うんですけど、
VOW WOWのセルフカバーアルバムを作ろうと思ってるとおっしゃっていましたね。

実は『2020』と並行して作ってたんです。
でもソロアルバムを作ることに一生懸命で、
寝かしちゃってる状態だったんですね。
去年(2023年)久しぶりに聞き返したらすごく良くて、
ちゃんと完成させようと思った辺りからVOW WOWのお話がどんどん進んでいって。
だからこれはもう、あの時寝かしていた意味は
このタイミングを待っていたっていう事なのかなって思って、
仕上げにかかりました。もうミックスもほぼ出来ています。

VOW WOWのお話は、いつくらいから水面下で進んでいたのですか?

新美(俊宏)が亡くなったのが5月だったから、6月7月くらいですね。
本当にあれがきっかけです。

恭司さんと厚見さんはよくデュオで共演されていますが、
元基さんとの絡みほとんどありませんでしたね。

そうだったね。
いつもそうなんだけど、厚見君が中心となってくれたね。
13〜4年前の再結成のときも、
こんなことやらない?ってキーマンになってくれて。

元基さんは学校のお仕事が一段落したタイミングだったと思うんですけど、
VOW WOWに関してどこまで前向きだったのでしょう?

十何年前にやったときに、
やっぱり「VOW WOW をやるのは相当なプレッシャーがかかる」
っていうのは聞いた事ありますね。
もうちょっと気楽に出来るセッションみたいなのは毎年やるけども、
あれをちゃんとやるのは確かに大変なことだもんね。
こないだの10月24日に僕と渥見くんとデュオでやったとき、
元基が後半ゲストで出てくれて3人でやったの。
もちろんお客様も喜んでくれるけど、
僕ら3人が集まるとすごいことができるっていう、
久しぶりの感触がありました。

3人でのリハもされたのですか?

2回やりました。
トリオの時にやらなかった曲もいろいろ試して、
これもできるねって話もしつつ、しっかり手応えを感じながらやりましたね。
よく化学反応って言葉を使うけど、すごい化学反応が起きる3人だったなぁ。
ツェッペリンの「Since I’ve Been Loving You」もやったし
ノイズの曲も1曲、あと VOW WOW のバラードもやりました。
3人なんだけど、すごかったです。

僕、元基さんのセッション拝見したのが1年以上前になるんですけど、
相変わらずすごくて、やっぱりこんなシンガーいない!って思いました。

なかなかいないよね。昔から突然変異的なすごさがある。
上手くてパワフルな声が出る人はいるけど、
あそこまで魂を振り絞って歌い切るシンガーは世界的にもそういないと思う。
煽り煽られつつという関係があるので、
そこがまた素晴らしかったんだなっていうのを改めて思い出した。

亡くなられてしまった方や離れちゃった方もいらっしゃいますけど、
VOW WOWがこれを機に続いていくと理想的ですね。

僕もそう思うね。
この間のクリスマスイブに集まったときに3人で話したりとかもしたけど、
僕らにしかできないからこれは大事にやっていくべきなんじゃないかなって
元基の口からも出てたんです。本当に嬉しい。
いつ僕らもラストライブになるかわからないって新美が教えてくれたからね。
だから出来るうちに出来ることをっていうのは
どれだけ大事か、改めて心に刻んだよ。

CLUB CITTA’でやることになったきっかけは、厚見さんの繋がりですか?

厚見君がチッタの丸山さんとすごく仲よくて。
元々は、チケット売り出したらすぐソールドアウトしちゃうから、
お客さんがもっと広いところでやって欲しいって言ってくれるんで
厚見君に相談したんですけど、
VOW WOW って音がすごく命で、
広いホールだと音が散らばりやすい印象が否めないんです。
CITTA’はライブハウスを大きくした様なダイレクトに伝わる感じがあるから、
僕は日程増やしてでも音にこだわりたいなって言ったら、
厚見君も実は僕も同じ考えなんだって言ってたんです。
だから本当に音のいいホールがあるんで、今後はCITTA’クラスはやるとして、
もう少し大きめなところも考えた方がいいのかもしれないね。
そんな話もしている所なので、みんなが健康である限り
今年が最後になることはまずないような気がする。
そういった VOW WOW の話が進んでいる所で
セルフカバーを出せるっていうのも
グッドタイミングというか、運命的なものを感じるね。
僕としては、あのときの VOW WOW の楽曲が
そのまま埋もれていくのが忍びないっていうのもあって、
もう1回新たな形で紹介したいっていう気持ちはあったね。
全然形は違うけど、涙出るぐらい感動するねっていう感じ。
ギタリストとしても自分の新境地が開けた感じのインスト作品になっているので、
ぜひご期待ください。

それにしても、変わらずライブで日本全国飛び回っていらっしゃいますね。

2021年は100本、22年は110本。23年は110本超えたかもしれない。
どんどん増えて自分でもビックリしてる(笑)。
色んなライブをやったね。
日比谷野音で、Charとで1977年の再現ライブをやったけど、
あれは素晴らしいイベントだった。
47年を経て当時の3バンドが元気で一堂に会するとはね。嬉しかったな。
7月にスウェーデンTIME TO ROCK フェスティバルに
BOWWOW G2 で出るんだけど、
あれもビックリで、僕のホームページに突然メールをくれたんですよ。
向こうにも BOWWOW のファンがいっぱいいるんだけど
Signal Fire』や『CHARGE』の曲は今でも演奏しているのか、とか
具体的な話までしてくれて。
ちょうど野音の直後だったのでライブ写真も送って、
とんとん拍子に決まったんです。
継続することで全てが結実して行っている様に感じています。
やり続けるって大事だね。
大変なこともいっぱいあるけど、
良いこともいっぱい待ってるからね。
継続のパワーっていうのは本当にすごい。

「Siva」は初めて6弦を Dまで下げて弾きましたね

アルバム『MINDPOWERS』のこともお伺いしたいのですが、
ロックテイストで尚かつオーケストラサウンドがゴージャス、
その上ドラムも生々しくて、とても打ち込みとは思えなかったです。

(満園英二にも打ち込みに聞こえないって言われた(笑)。
自分でも好きでドラム叩いたりしてたし、
どうすれば自然に聞こえるかって事は相当意識していたね。

恭司さんの作品を特徴づけるブラスやシンセですけど、
最近の流行からこういったサウンドが少なくなっちゃった感じがしました。

そうかもしれないね。
どちらかと言えば、皆んなエレクトリックなテイストになってるかもしれない。
僕やっぱりゴージャスなロックがすごく好きだから、
もしかしたら古いって言われるかもしれないけど、
自分の頭の中に鳴ってるものをそのまま出してます。
僕にとってやっぱりこれが一番美しい形なので。

今回のアルバム、往年のファンは皆さん大喜びだと思いますよ。
どストライクゾーンばっかりですから。

(笑)。

「Open Mind」、トライアングルとギロが出て来る遊び心が面白いですね。

ちょっとしたスパイスを入れるのが好きなんですよ。
隠し味で効果的な、ね。
あそこはギロがなかなかいい味を出してくれたかなと。

今回のアルバムのギターはHRが主体なのですか?

HRブラックパーツ
一番最初に出来たHRカスタムプロトタイプだね。
いろんな材を使った6層構造の楽器です。
これを一番多く使いました。
Uranus」など静かなソロがある所はストラトを使っています。
ガラッと違うのは、「A Billion Years Later」のメロディ。
実はPRSSANTANAを使いました。

曲中で変えたりされていますか?

HRの一番新しいスペシャルカスタムは
ブラックファーストと全然違うザラっとした硬い音がするので、
ストラトよりもちょっと太くてクランチ気味の音が欲しいときは
それを使ったりしました。
Open Mind」のバッキングリフはエピフォンSGを使っています。
そうだ、絶対言わなきゃいけないのがあった。
ちょっと民族音楽的な「Siva」って曲のリズムは、
ツェッペリンジミー・ペイジも「Kashmir」で使っている
ダン・エレクトロで録ってます。
ダン・エレクトロは静岡の友人から頂いたもので、
すごいチープな材で出来てるの。
でも、あれでしか出せない音があって、
民族音楽の香りがするんです。
僕は頂いてすぐ、多分1週間以内に
“こんなリフが出来た”ってFacebookに上げたんです。
それが「Siva」のリフなんだよね。

あの独特な雰囲気はエフェクターを通した訳ではなくて、
ギターそのものの音色なんですね。

そうなんです。
あのギターだからこそ出せる音で、
手にするとああいったリフが浮かんで面白い。
シタールみたいなビビる音が加わるからね。
初めて6弦をDまで下げて弾きましたね。

キャッチーなメロディの「Open Mind」、
リフでガンガン攻める「Let It Loose」、
バラードの「Open Doors」と、
凄くバラエティに富んでいますね。

バランスを常に考えるからね。
最初に出来たのが2曲目の「Let It Loose」で、
そこから作り始めたんです。
ヘビーでシャッフルな明るめのも欲しいなと思って1曲目が出来て、
今の気持ち的には間違いなく「Open Mind」だろうって。
もうみんな解き放って心もオープンにしようよ、って。

「Let It Loose」のツインリードには、
あえて完璧なハモリにしない所に、すごく遊び心を感じますね。

うん、ずれた方が迫力が出る事って多々あるからね。
1人で重ねたツインと2人重ねたツインはやっぱり違うから。
だから何事も、完璧にすべき所は完璧にするけど、
多少ずれた方がかっこいいと思う所はずらす。
両方分かった上でね。

「Let It Loose」には遊び心を感じまして、
みんなでセッションする時の為に作ったのかなって思いまして。

実は最初からセッションやるために作った曲があって、
The King of Salamanders」がそうなんです。

え、そうなんですか!? 意外です。

いや、最初はその予定でいたのが、
どんどんどんどん掘り始めて、
結局は大作になってしまったんです(笑)。
最初はリフがあって、Aメロなんて一発で自由に弾いて。
それにサビが来るから、もうセッションでぱっと出来るなと思ってたんだけど、
だんだん凝ってしまいました。
めちゃくちゃドラマティックに仕上がってしまったのですが、
それはもうしょうがないです(笑)。

「A Billion Years Later」の
イントロで木管みたいな音が鳴ってるのが印象的だったのですが、
あれはギターですか?

あれは実はね、シンセの尺八なんです。
後でEBowでやろうと思って入れていたんだけど、
なんかその音が気に入って。
独特な世界を出してると思ったので入れています。

恭司さんはそういったシンセサウンドもギターで出せちゃうので、
もうホント聞き分けがつかないです。

出せます(笑)。

「A Billion Years Later」と「Uranus」は組曲みたいに聞こえます。

そうだよね。
A Billion Years Later」の最後の静かな所は、
ちょっとしたクエスチョンマークなんです。
10億年後、人類は多分滅亡してると思うんですけど、
地球だって消えてしまってるかもしれない。
最終的には太陽だって超新星爆発とかで
地球を飲み込んでしまって銀河が全部消えちゃうわけだから、
結局は宇宙に戻っていくわけ。
そんな事を想像していて、
宇宙って所でそのまま天王星(Uranus)に繋げちゃったんです。
だから音的にも並べ方的にもすごく自然な流れで繋がるようにやったつもりです。
最後の1分くらい続く不穏なムードの箇所は
ホールトーンスケール(全音音階)を使っているんだよね。
“おや?”“あれ?”っていう気持ちにさせてくれるスケールで、
“何が起きるんだろう?”っていう所をホールトーンスケールに託してるんです。

(BOW WOWの)「ソルジャー・イン・ザ・スペース」の
イントロを思い出しちゃいました。

そうだね、確かにあれも宇宙のとこから始まるから。

やっぱりHRが一番 コントロールしやすいし ナチュラルなものになる

「Uranus」のシングルコイルっぽい、
指のタッチ感まで聞こえてきそうな生々しいトーンがすごく印象的でした。

数年前に作ってもらった Moon の赤いストラトを使っていて、
完全なシングルコイルです。ピッキングの強さだけで
柔らかい音から歪んだ音まで出せるようなアンプのセッティングにしていて、
ボリュームももちろん使うけど、ほとんどピッキングのタッチでやってますね。
FractalFM3 を手に入れてすぐの頃、
ストラトの良い音が作れないか色々と試したんです。
そうしたら生々しく良い音が出来たので、音のスケッチとして、
コードもクリックも関係なしに自由にフレーズを弾いて録っておいて、
しばらくそのままにしておいたんですよ。
ある時、息子の真央樹の家に遊びに行く事があって、
真央樹が赤ちゃんの声をメロディに見立てて
オーケストレーションしているのを聞いて衝撃を受けたんです。
その時に、コードとか意識せずに弾いたあのストラトの音を思い出して、
もう一度聞き直したんですね。
それに色んなコードを当ててるうちに、
これは美しいものが仕上がりそうだと思ったんです。
テンポも何もないので、ギターのフレーズに合わせて勘でコードをつけて、
そうして出来上がった曲なんです。

ということは、スケッチで録音したトラックが活きているんですか?

そう、そのまま。
それにキーボード重ねてね。
多少は編集したけど、9割以上はその時に無造作に弾いたまま。
よくこんな展開になったなと思うよ(笑)。
途中でシンバルが入ってきてオーケストラになっていくのも後で決めた事で、
予定も何も考えず思いつくままに弾いただけなんです。
でもこういった作り方は新鮮ですね。
リズムがないのでライブでの再現は不可能だと思っていたんだけど、
先日オケ流しながら試してみたら近いところまで行けたので、
新潟のライブの時に初めてやっちゃいました(笑)。
大好評だったので、これでアルバム全曲ライブでやれるな、と思いました。

その様に作られていたとは、全く想像もつかなかったです。
曲もトーンもとても生々しいと思っていましたが色々と納得しました。

音数の少ない曲で、何もない宇宙空間に浮かんでるような感じはあるよね。

最後の「Open Doors」、
出だしのハイポジションで弾かれている透明感ある音色は、
トーン絞ってるようなクリーミーな印象もあります。

トーンとボリュームは絞り気味だね。
これ、昔のFractalでやってるんです。

昔の…やっぱりFractalも曲によって選んでいるのですか?

メインで使ったのは Axe-FxⅡ という一個前のなんです。
一番新しい FM3 も使っているけど、
新しければいいって訳じゃなくて、違いがあるから。
Open Doors」の頭の部分は、
実はガイドメロディのつもりで録ったものなんです。
ライブか何かで FM3 Axe-FxⅡもスーツケースに入っていて、
仕事部屋にあったのが Ultra っていう初期のものだけだったんですね。
後で Axe-FxⅡに差し替えようと思ってたんだけど、
その時弾いたものがあまりにも良くて超えられなかったんです。
多々あるんだよね、ガイドで適当に弾いたものを超えられないっていう事って。
BOWWOW 時代の「TAKE ME AWAY」のソロもそうだし、
HORIZON』の「MARS」という曲のソロも、
マイクのセッティング中に適当に弾いたのがすごく良くて、
そのまま残っているんです。
テイク1のマジックはやっぱりありますね。

録音して保存してあるのが素晴らしいですね。
録ってなくて“しまった!”と思われる方も多いと思います。

たまにあるんだよね。
スタジオ入ってモニターのバランス確認してる時の演奏が
“今の良かったのに!”ってなること(笑)。

この曲は力強さと温もりがあって、
ピッキングスクラッチもエモーショナルで美しく、
メロディも素晴らしいですよね。

ありがとう。
サビのメロディはアドリブで割と無造作に弾いたんだけど、
二番でも同じ事を繰り返せば立派なメロディになると思って、
オクターブ重ねたりしてそのままメロディにしたんです。
後半のソロでやった事なんだけど、
フロントピックアップを使ってピッキングハーモニクスを入れてあげると、
めちゃくちゃエモーショナルな音になるのね。
フロントピックアップはピッキングハーモニクスは出づらいんだけど、
うまく入れてあげてると爆発的なエモーショナルな音が出る。
僕は90年代からその手法使っています。
今回のは“ドアを蹴破れ”って感じだよね(笑)。

「Open Doors」のギターはHRカスタムですか?

HRカスタムのプロトだね。初号機で弾きました。

今回のアルバムは、アーミングが繊細な曲がすごく多いと思うのですが、
HRだからこそ表現出来る事というのはありますか?

PRSとかロック式のギターはいろいろ持ってるけど、
音が消え入る感じにしてもHRが一番コントロールしやすいね。
アームが下がる事で柔らかさが加味されるところも、やっぱりHRがいいね。
もう身体の一部になってる感じがする。
もっと抜けのいいギターもあるんだけどね。
ボリュームやトーンを絞った中での繊細なコントロールは
THE HARMONY OF 57 STRINGS』でもかなりやったんだけど、
やっぱりHRが一番コントロールしやすいし、
ナチュラルなものになります。

アーミングにしてもタッチの位置にしても、微細で繊細ですよね。

もう無意識のうちに
スキャットで歌う様な気持ちでギターを弾いてるから、
自ずとピッキングの位置や強さや角度が変わって来るんだろうね。
常にボリューム10で弾き続けることは絶対ないんで(笑)。
1音ずつ考えながら弾いてるんじゃなくて、
声を出す様に自動的に身体が動いてるようなところがある。
ギターで歌う様に弾くというのがずっと目標だったんだけど、
ちゃんとそうなりつつあるなと思っています。

今回はベースも弾かれていますか?
「A Billion Years Later」のベースが印象的でした。

全ての楽器を弾いています。
ミックス、マスタリングまでオール独りです(笑)。
A Billion Years Later」のミドルセクションは、
ギターとベースで対旋律を作る事を意識していました。
メロディ楽器としてベースを弾いてる曲が何曲かあるよね。

ちなみに今回歌おうとは思わなかったんですか?

思わなかった(笑)。ギターが歌ってくれるからね。
弾き語りライブをやってると、
バンドで歌うよりアコースティックでの弾き語りの方が100倍歌いやすいと思う。
歌の表現をしっかり出来るからね。
僕の場合は WILD FLAGBOWWOW G2
大音量だから力を入れて歌わないといけなくて。
アコギだと力を抜くところから力をしっかり入れるところまで、
ダイナミクスのコントロールがしやすいです。
バンドでのライブだと、
繊細な音を使いたくてもかえって伝わりにくいようなジレンマがあったりするからね。
だから、歌うときはなるべくアコースティックにしている。
なるべくむき出しの方が自信持って歌えるからね。
アコギの作品、また作ろうかな(笑)。

 

「bhodhit magazine 電子ばん!」にも掲載!!

本インタビューは、弊社の新サービス
bhodhit magazine 電子ばん! にも掲載されます。
(2024年9月19日(木)現在、運用テスト中)

特別に、誌面の一部をお見せしちゃいます!

誌面の一部をこっそりチラ見せ!

雑誌としてデザインされた誌面で
本インタビュー記事をお楽しみ頂けます。
ぜひご登録ください!

bhodhit magazine 電子ばん!β
音楽・芸術を中心とした人生をさらに楽しくするための総合情報誌 バディット マガジン 電子版
タイトルとURLをコピーしました