「ロックンロールはロールしなきゃ」NO-MAD 酒井泰三 超ロングインタビュー!!!

NO-MAD

1月に圧巻のライブを行い、
先日のライブレポでも取り上げた
6人組バンド、NO-MAD
そのバンドを率いるギタリストである酒井泰三氏に
バディットマガジンの坂上志歩、倉川知也が独占インタビュー!
バンド結成、リズム、グルーヴなどについて
大いに語っていただき、
1万字を超える大ボリュームにてお届けします!

(先日掲載のライブレポートはこちら!)
https://bhodhit.jp/no-mad/

酒井泰三 インタビュー

坂上:
基礎的なところかもしれないですけど
まずはNO-MAD結成の経緯を教えてもらえますか?

NO-MADの歴史で言うと
ELECTRICNOMADっていうのが先ずはあって。
あれは1996年頃だったかな。
93年ソロアルバムの『EATJUNK』が落ち着いた後、
太田恵資佐藤研二佐野康夫と俺っていう
メンバーでしばらくやってたんだけど、
俺の悪い癖というか、欲求が出てきて。
『EATJUNK』のときもそうだったが、
自分で音源を作るときに
複数の打楽器がベーシックとしてあったほうが
気持ちいいのよ。

で、それを具現化するには
どうしようかなっていうことで、
『EATJUNK』のライブは
ループを回してやってたけど、
ループは融通効かないから、
それじゃいかんなと。
で、編成を変えていこうと。

始めはドラムが嶋田吉隆(dr)と
佐野康夫(dr)のツインドラム、
ベースをナスノミツル(b)、
それに今堀恒雄(g)、太田恵資(vil)と
俺の6人で始まったんだ。
それから何年か経つうちに
メンバーが変わって、
ドラムにロジャー高橋(dr)、
ベースに荒井裕次(b)っていう
今現在の形になって。

今のメンツになってから
もう大体4〜5年は経ってるんだけど、
また俺は、どうしてもこう、
人の声の要素っていうのが好きでさ。
たまに太田さんが気分がのると
素晴らしい声を出してくれるんだよ。
それをやってくれないかな
っていう風にはずっと思ってるんだが、
なかなかそういう訳にはいかない。
彼は純粋なインプロバイザーだからね。

で、ある野外のイベントで
AH (from 高円寺百景)ちゃんという存在を知って。
もうかれこれ10年近く前かな。
その時に彼女がやってるバンドを見て、
彼女の声にびっくりして。
NO-MADで彼女を入れて
やってみたいなっていうので、
AHちゃんを入れた編成が実現した、
そんな感じですかね。

1番始めの編成でのライブ版っていうのが
2012年のCD
(『LIVE AT SHOWBOAT 2012』)で、

 

その後にCDという形ではないけれども
Bandcampで2回配信リリース
(2019年『ZDANDA』
2020年『2EASTTASTE!?』)
してる。
一応、そんな感じですね、
歴史と出してる音源としては。

NO-MADはダブルミーニングになっていて

坂上:
NO-MADのバンド名の由来も
教えてもらえますか?

NOMADは、まぁ、遊牧⺠なんですよ。
で、表記としては
ダブルミーニングになっていて。
NO-MADで、
怒りはダメだねっていう
意味もあったりとかする。
自分ではNO-MADの存在として、
ある意味象徴的な人というと
太田さんかな。
メンバーが、いろんなところに行って、
あんな音楽やってるぞ、
ちょっとなんかやってみるとどうかな、
そういう紆余曲折しながら影響されながら
俺たちは進んでいくみたいな、
そんなニュアンスってのはあるね。
最初はELECTRICNOMAD
ってしたんだけど、
もっと短縮して言いやすくした方が
いいなって思って。
それで形も変わったことだから
NO-MADになった感じかな。

坂上:
今演奏されてる曲は
ELECTRICNOMADの時からの曲なんでしょうか?

当時からやってる曲は
「GetTough」「砂の匂い」だね。
一番最初にできた曲が「GetTough」で、
もう30年くらいやってるね。
IMAバンドでベースやってたこともあって、
低音域が好きなんだけど・・・

倉川:
バンドでベースもやられてたんですか?!

はじめギターで入ったんだよね。
Rodney Drummerがベースで、
Cecil Monroeがドラムだったんだけど、
1枚目は「大変」で、
その次「METALPOSITION」っていう
IMA名義の2枚目(当時はLP)でさ。
そのレコ発のリハーサルに行ったら
ベースが辞めちゃったんだっていうわけだ。

けど、何故か床にベースが転がってて、
しょうがねえなと思って
なんかの曲のリフを弾いたんだよね。
そうしたら近藤さんが
“酒井くん、ベースいいね。Pay you double!”
なんて言うわけだ。
“Pay you double!”なんて、
俺には言ってくれたことがなかったもんで、
すげえ嬉しくなっちゃって。
じゃあ今度のライブはベースになってさ。
それがライブの
3日前ぐらいのリハーサルだよ!
しょうがないから、まあ、ベース弾いて。
で、それからしばらくは、
俺が9割ぐらいの
ЯECKFriction)が1割くらいの割合で、
それがそのうち7割:3割くらいになって、
最後は基本的にはもうЯECKが
ベースになってっていう、
そういう経緯があったんだ。

その前に自分の宅録で
ベースを弾くっていうのはやってたけど、
いきなりIMAバンドで
ベースってたまんねえじゃん!
でもそれでベースの低域の
ものすごさっていうか
必要さに気づいて。
ギタリストという位置での
ベースの感じ方とか
ベースを弾いてる中の
音楽の感じ方っていうか、
その2種類を世界最高峰の
IMAバンドで体現できてさ!
これがある意味『EATJUNK』の制作にも
繋がったかなって。

で、「GetTough」の話に戻ると、
ギターでいうとドロップDが好きなんだよね。
その響きがなんか好きで、
あと音階的にいうと
アラブっぽいみたいな感じのが好きで、
そういうのを混ぜたらなんか意外と
低域の方でのヘビーファンクリフ
っていうのを思いついた、
そんな感じかな。

リズムの気持ち良さがありきだし、そこにいきたいなって

坂上:
「GetTough」を聴くと
「NO-MADのライブ来たな」って思うんですけど、
1曲目は「GetTough」って決めてるんでしょうか?

別の曲に変えた時もあるけど、
どうも調子がよくない。
「GetTough」はスタートアップの曲として
“さあ行くぞ”みたいな感じがあって。
もう⻑年やってきてるからっていうのも
あるのかもしんないね。
バンドメンバーはどうかわからないけど、
やっぱり俺は、なんか一発目にやると
エンジンかかるとか、そんな感じですわ。
違う曲でやってもなんだか調子が出ない。
おもしろいね。

倉川:
NO-MADは音符で割り切れないみたいなところを
しっかり表現されているので
情報量がすごく多いんですよね。
聞いてる側としてはガツンときますね。
思考が止まっちゃいます。

それは嬉しいね。
思うんだけど、情報量って言ったら、
単純に言うと音符の細かいものとか
難しいフレーズ弾いたりとかあるかな?
それはそれですごくいいと思うんだ。
でも俺にはそれは無いっていうのもあるし、
バンドのニュアンス・音が
そのまま音楽になってるっていうのもあるし。
NO-MADはリフとか構成とかは
俺のアイデアなんだけど、
内容に関してはメンバーがいかに
いいようにやるかという感じで
総員で寄ってたかっての情報量だね。

ちょっと話がずれるけど、
ドラム2つだから、
ドラマーにとってツインドラムって
結構きついんだよね。
なんでかっていうと、
ドラムはド・センターなわけだ。
で、全てを受け入れて
コンダクター的な役目っていうか、
そういう部分がすごく濃厚な
ポジションなんだ。
それが2人いるとだよ?
「俺はこうなんだけどお前は?」とか、
そういうこと。

でも、俺が好きなのは、
ドラムの彼らには申し訳ないんだけど、
1人1人のリズムのテイストがあって、
それが混ざって
違うものになる瞬間がある。
で、それがすごい好きで。

自分で、DAWとかで音を作る場合、
リズム隊は4つとか
いっぱい鳴ってるわけよ。
もちろんマスキングされて
ゴーストになって聞こえないとか、
そういったものがいっぱいあるの。
でもそのワシャワシャ感が好きなんだよね。
ライブ演奏自体はあくまで基本的には
彼らのセンスに丸投げしちゃってる。
それはなぜかって言うと、
譜面とか綺麗な形で分かりやすくメンバーに
提示できるわけではないので、
だから、事前に音源とかギターリフとかで
「こういう風にしたいんだ」と伝えて
彼らのイメージを引き出してもらって
それを聴きたいっていう。
で、俺のギターもそうなんだけど、
リズムの気持ち良さが
1番俺は大好きだから、
まあ、そこがありきだし、
そこにいきたいなって。

オールローズのストラトは低域が・・・

倉川:
酒井さんのリズムと音色の感じって
唯一無二ですよね。
またあの洪水みたいな歪みの音色、
普通あんなに歪かけたら
潰れるんじゃないかって思うんですが
ちゃんとトランジェント残しながら
塊のように襲ってくるんですよね。

秘密というか、自分なりに分析して考えると、
まずはそれを求めてる自分の脳みそがあるね。
で、ギターがオールローズっていうのが
要素としてすごくあって、
ローズウッドは
ご承知の通り材が硬いわけだ。
硬いんだけど音はなんか、
生音はちょっとナマメカシイ。
艶やかさも一緒にあった。

ギターのピックアップで言うと、
俺は12歳くらいの時にジミヘンに
ショックを受けたんだけど、
その後20歳の時まで
デュアン・オールマン
(オールマン・ブラザーズ・バンド)
になりたかった。
で、20歳になってレスボールを買ったわけ、
スリーピースの重たいやつで、
めっちゃくちゃ鳴らなかった。
その前はテレキャスのギターを使ってて、
日本製のシングルコイルで
アタックがすごい強くて。
ハムバッキングだと
高域の攻撃性がないじゃん。
でもなんとか頑張って使ってたんだけど、
ストラトを弾いてみると
シングルだから高域の攻撃性がでる。
だけどアルダーやアッシュとかのボディだと、
いくら歪ませようとしても
密度ある音にならなくて
スカッとしちゃう。
で、たまたま
オールローズのストラト
っていう存在は知ってたんだけど、
それが2004年かそのぐらいかで手に入って。

倉川:
オールローズのストラトは
新品で買われたんですか?

そう。fender
カスタムショップマスタービルドだね。
オールローズは材質は硬いんだけど
低域がグッと下に落ちるんだよ。
で、“これだ!”と思って。
音の輪郭が他のボディみたいに、
どこか枯れてるっていうのじゃない。
なんかすごいサスティーンと
密度感があって。

昔からアンプのトーンなんかは
フルテンにするもんだって風に
全開で鳴らして、
しかもアンプ直で
それをやってたもんだから、
たぶんそういうのが
すごくあるかもしれないね。
今はそんなに下の音は
ブーストしてないんだけど、
でも元の音がやっぱあるから
全域出したいっていうのがあって、
オールローズはそれが出る。

倉川:
酒井さんのストラトはUSAですが、
昔、Japanでもローズウッド出してたんですよね。

そうそう、
テレキャスターとかね。
fenderJapanの
オールドローズのテレキャスターも
触ったことあるけど、あれもいいよ。
今は材質がないから
新しく作るとなると大変なんだろうけど、
あれはいいよね。
でもあれ重たいんだよ。
5キロくらいある。
歳取るとさ、きついじゃない(笑)。

まあ、
そのギターの音色とか、
リフのニュアンスとか、
リズムの感じとか、
そういうので
NO-MADのベーシックなところ、
自分が出す主な部分っていうのは、
そういうことかな。
だから、それを発展出来る編成が
今の形っていうのもあるかな。

ある意味奇跡的な組み合わせだったね

倉川:
NO-MADは人選もすばらしいですよね。
ドラムでいうと佐野康夫さんは
割と細かいことをやるタイプ、
ロジャー高橋さんは
寡黙にやるじゃないですか。
その混じりというか、
ハマった感じがボトムとしては
おもしろいですよね。

そうだね。
それはもう、彼らのキャラクターに
大感謝しかないです。
いろんなドラマーと接する機会があって、
生音をまずは聞いて、
その生音の出方とか、あとはフィールね。
ビートのフィールが俺にとっては
やっぱり1番大事で。
で、その組み合わせで
どういう風になるかなっていうのは
やってみなきゃわかんなかったけど、
やってみて良かったなって。
ある意味奇跡的な組み合わせだったね。

で、ベースが大変なんだよ。
ベースは本当にローが出ないと
ダメなわけで。
ダメというかそれが必要になる。
今やってくれている荒井くんは
すごく低音が出せるやつなんで。
彼は珍しい。
彼はもっと自分の低域を信じて
アプローチをしてくれると、
もうそれは嬉しいね。
ドラムがうねっていくには
ベースが必要だから。
で、ドラムのフィールとベースの帯域が
すごく下に落ちれば全体の音像は
すごく広くなるんで。
ベースの帯域が上がっちゃうと
もうギターの帯域は
狭くなっちゃうから辛いよね。
で、俺もギターの下の方の音を出したいから
ベースが下にいってくれないと困るんだよ。

倉川:
酒井さんのギターを活かそうと思ったら
他のメンバーは全員上下に
逃げなきゃいけないから大変そうです(笑)
でも、酒井さんのギターの音ありきで
みんながどうするかっていうことだから、
やっぱりコアにないとと思うわけです。

なるほどね。帯域的にいうと
非常にワイドレンジのものがこう
どどっと押しよせていく感じ。
すっごい昔のインタビューで
大陸風みたいな音を出したいと
言ったことがあって、
ある意味そういう感じかな。

倉川:
もっと大きい会場で見たいと思いますね。
壁とか床とか揺れますもん、絶対。

もう、望むところ。
それはもう、ほんとに。
でかい会場だと音の作り方が
難しくなるっていうのはある。

でも思うんだけど、
俺が10代だった頃に初めて見た
ロックコンサートが
Led Zeppelin
2回目の来日ライブだったんだけど、
まあ当時のPAとか発展途上だし。
自分達でやった10代のライブとかって
直でアンプ突っ込んでPAとかもなくて、
ボーカル立ち上げるための
ボーカルアンプだけだったから。
それにキックをちょっと足してとか。
なんていうかその感じがすごく
残ってんのかもしんないね。
だから上げてなんぼだし、
だけど上げっぱなしだでもダメで、
そこらへんのバランスがね、
身体に染みついてるかな。

あ、1つね、
俺にとってもう一人の師匠である、
古澤良治郎さんのパパラッコバンド
ってのをかなり以前にやってて。
ギターが俺含めて3人いたりとかして、
自分の50ワットのアンプ1個じゃ
聴こえないんだよね。
その時にアンプ2つ繋げるようになって、
そうすると自分が聞くこえるからいいなと。
そっから、いやその前からか?
元々俺の音はでかいのに、
また更に音がでかい、
で、現在にいたる。
そういう感じなんだけど。
バランス的に出音で
自分の音が聞こえないのが
ストレスになって、
すごく嫌なんだよ。
自分が何も聞こえてないのに
弾けったって弾けねえよなって。
何も聞こえないのに
「出てるからオッケーですよ」
なんて言われてもできませんよ。
全然弾けない。
だからこう、
先ず自分自身に音をブッ込まないと。
それでもってガーッと出さないといけないから。
それがすごくあるんだよね。

彼女でうまくパズルのピースがはまったという感じ

倉川:
音を一定量出さないと体が揺れないし
空間も揺れないから心地よくないんですよね。
NO-MADは心地よい爆音なんですよね。
でもって、AHさんが入って
さらに狂気が増した感じで(笑)。

彼女はもうほんと素晴らしいとしか
言いようがないね。
俺自身、彼女の声を聴きたいしね。
基本的に彼女は
インプロバイザー(即興)だから、
きっちりしたアレンジじゃなくて
その場でもって
彼らがどういう風に動いていくか
とかをみながらやっているから、
それは情報量が多くなるよね。
音は動かないとダメなんだ。
動く音を出すっていうのは、
すごく象徴的だし抽象的な言い方なんだけど、
大事なのはそこだよね。
だから、AHちゃんがやってくれて
すごく嬉しいし、
いつも声かけたいくらい。

倉川:
AHさんが入ったバージョンの方が
さらに説得力が増す感じがするんですよね。
音を詰め込まない、いわゆる「隙間」が
音楽には必要だとやっぱり思ってて、
グルーヴも隙間をどうするかっていうところ
じゃないかなと。
で、NO-MADさんって
音がドーンとあるんですけど、
女性ボーカルが入り込むような帯域が
ある程度うまく開いている気がするんです。

まさにその通りでね。
彼女はいろんな
ボイスキャラクターができるんだけど、
基本的に持っている
声の力の部分っていうのはすごく強いし、
だから突き抜けることができる
っていうのもあるし、
よくハマってるっていう風に思うんで。
わざと空けてたわけではなかったんだけど、
うまくパズルのピースがはまったという感じ。

倉川:
あとNO-MADを初めて見た時に
陰陽の勾玉みたいだなと思ったんですよね。
メンバー全員そもそもすごく
エッジが立ってる人たちばっかりなんですけど、
バラバラにならずに
陰と陽も入れ替わったりとかしながら
調和して流れていくのが心地よくて。

そのバランスを始めから取る
ということではないんだが、
個がすごい強くないと
ああいうバランスに成らないよね。
まあ、その判断っていうかチョイスってのは、
俺がそういう風にピックアップ
したわけじゃないけど、
やっぱり音がすごくいい人っていうのが
基準にはなってるね。

曲というフォーマットは
もちろん使ってるんだけど、
内容的に言うとビートありきの
インプロっていう側面が
すごく大きいわけだよ。
で、すごいインプロバイザーが
沢山いるバンドなわけだから。

別にインプロができるからいいとか
そういうことじゃないんだけど、
状況に応じて彼らは
いろんなアレンジをしてくるんだ.。
彼らは考えてるんじゃなくて
反応してるんだよね。
そこがやっぱり肝かな。

ロックンロールはロールしなきゃ

倉川:
たしかに反射的に全てことが起こってる感じですね。
その最初の火付け役が酒井さんみたいな。

俺はすごいリズムが好きだから、
そのノリというところっていうのは、
いまだに追い求めたいし。
で、ギターで独自のノリを作る
っていうのは、すごい難しい。
だけど昔の弾き語りのブルーズとかなんかは、
飲み屋でみんなあれで踊ってたんだろうね。
ブルーズもダンスミュージックなんだよね。
⺠族音楽とかって言われてるのも
基本的にダンス・トランスミュージックの
要素が強くあると思う。
で、踊らなきゃいけない
ってことじゃなくて、
嬉しくなってなんかそういう風に
なりたくなるっていう。
それは一体なんだ?っていうこと。
それはどうやったらできるのか。
で、ロックンロールは、
ロックというか、
ロールしなくちゃいけない。
ロールは正円じゃなく楕円で、
緩急がついて推進力がでる。
正円だとずっと同じスピードになって
ロールしない。
鞭みたいな感じのしなりが、
ある意味近いというか、
つながるものがあるかもしれないね。
ロールすることの難しさって
「こういう風にやればそういう風になる」
っていうことじゃないんだよね。

リズムの関連で言うと、
モンタレーポップフェスティバルの映画で
ジミヘンの映像をみてびっくりしたね。
もう力抜けまくって脱力がものすごい。
ジミヘンはコードを弾かずに
ジャカジャカジャカって
ブラッシングをするんだけど、
あれはすごい気持ちいい。
もっとやってくれっていう感じで。
でも自分がやってもああならんのよ。
なんだこれって。
そっからリズムの探究が始まって。
このリズムがなんで
気持ちよくなるんだろうって。

例えばBooker T. & the M.G.’sなんか
シンプルなんだけど、
スティーヴ・クロッパーのギターと
アル・ジャクソンのドラムとか
バシって止まるんじゃなくて
そのままバーっといくわけよね。
なんじゃこれ、とか。
そこにオーティス・レディング
歌が入ったりして、
なんかその歌の呼吸が
凄いって感じだけど、
例えばそういうのが全部こう、
ノリなんだなって。
だから、
エイトビートのパターンができれば
エイトビートができるってわけじゃない。
全然違う。

エイトビートのパターンを叩いても
かっこよくないドラマーは
いっぱいいる。
なんでアル・ジャクソン、
アル・フォスター
チャーリー・ワッツ
リンゴスター
リスペクトされるかっていうと、
そういうビートの
テイストっていうのがある
ドラマーだから。
そういったドラマーっていうのは
実はもっと
リスペクトされなきゃいけない。

確かに音を細かく
いっぱいやるっていうのも
一つの技術ではあるけど、
自分も気持ちよくなって聴いている連中に
“イエイ!”ってなれるかどうかだよね。
昔のリズム&ブルーズもそうだけど、
Sly&the Family Stoneとかさ、
スティービーワンダーの「迷信」とかも
めちゃくちゃファンキーで。
マルチデータ持ってるやつが
いるんだけど、
ドラムがすごいヨタってる
っていうんだよ。
なんだけど、
トータルで聴くとものすごいじゃん。
あのイントロ聴いただけで“わっ”となる。
ギターでもそうだよね。
持っていかれるとか、
そういうのがほしいんだよね。

生きるか死ぬかの怪我をした時に掴んだもの

倉川:
リズムが酒井さんの肝ですよね。
ずっとこだわってらっしゃるから。

IMAバンドにいる時に
“お前の自分の音を出せ”って
近藤さんに言われて
散々悩みまくったんだ。
人の言われた通りやってても
自分の何かが入らないと
そうならないじゃん。
あのバンドは存在がものすごすぎるから、
すごい影響されてるけど、
もう近くにいたら火傷しっぱなし。
ものすごい大感謝ではあるんだけど。

で、『EATJUNK』が
出来たきっかけになった
曲なんだけどさ、
当時、オールインワンシンセが出始めて、
それでリズムを勝手に
ちょっと作り始めていったときに
“これだ”というのが録れて。
8小節くらいだったんだけど
ずっとデモテープ聴いてたね。
自分の音はこれだって。
自分がやりたいのはこうだって、
そういう具体的なものが
曲として出てきたんだよ。

で、『EATJUNK』の
レコーディングをした時に、
ベースも何曲か弾いたんだけどさ。
ノリがベーシストとはちょっと違って。
ファンキーなグルーブっちゅうのかな。
音の出し方の違いでもあるし、
演奏者が違うから別物なんだけどさ。
俺はなんか、
このところはぐっと持っていけるよな
っていう風に思って。
で、ギターでまた探し出して、
BPMでいうと
70後半から90ぐらいまでの間の
割とゆっくりした中で
ギターをガチャガチャやるのが好きで。
で、そういう風に探してたね。

それで生きるか死ぬかの怪我した時に
3ヶ月間くらい入院した後、
実家で静養してたの。
そこにたまたま自分の
マーシャルのギターアンプが
置いてあったの。
で静養中だけど
何気に弾いてみようかなと思って、
それでずっとリズムを1人で
ずっと弾いてたんだけど、
もうめっちゃくちゃ
気持ちよくなっちゃって。
それが4時間ぐらい
1人でずーっとやってたの。
ノリのポイントにぐっと入ると
そっから離れたくなくて、
疲れてくるんだけど止めたくないわけ。
で、ずっと弾いてて疲れてきて、
なんか弾き方がちょっと変わってきて、
自分で聴いたことのない
その変わった弾き方を再現しようと思って
また探したりとか。
とにかく自分1人ですげえ気持ちよかった。
それってなかなか他人には
わかりづらくってさ。
でもこの間のライブでも
リズムの要素とか入れたりとかしてんだけど、
俺がやってんのとやってないのとで
全然違うんだよ。
たぶん、俺しかできない部分。

前、ギター教えててね。
まずはクリック消すところから始まって、
そこからちょっとずらして
クリックを出す、消す。
それで、ちょっと後ろにして出す。
で、消す。
それをものにしてから
いかにタイミングを微妙にずらしていく。
それってあらゆる国の⺠族の人たちは
普通にやってたりとかするんだよね。
ノリの色合いっていうのは
もうすでに世界中にいっぱいある。
それを聴きたいよね。
聴きたいし、
俺はNO-MADっていうバンドでは
独自のノリを出したいと思ってる。

今はマニピュレートとか
クオンタイズとか、
いろいろかんじゃったり、
音の何かをキレイに
均一化させるためにそういう風に
やったんかもしんないけど、
むしろバラけた方がおもしろい。
だってみんな違うんだもん。
ライブとレコーディングの違いとかね。
そういうバージョンの違いっていうか、
それはすごくあるんだよね。

倉川:
酒井さんが役者をちゃんと集めてるから、
リズムとかグルーヴで盛り上がれるNO-MADが
成立してるんですよね。

思うんだけど、
ぱっと聞いた時に歌詞で盛り上がる
ってよく言うけど“ほんとなの?”って。
まぁ、〜60年代や70年代の歌謡曲は
ボーカルオリエンテッドで
歌が引っ張っていくっていう、
歌がすごいグルーヴがある
素晴しいボーカリストはいるんだけど。
美空ひばりさんとか⺠謡の方とかね。
もちろん歌詞の重要性はわかってるよ。
ボーカルの人はそこが何よりも
大事かもしれない。
ただいろんな要素があるんだよね。
声の質とかタイミングとか。
それはある意味グルーヴと呼んで
差し支えないわけで。

確かに歌好きなんだよ、俺。
人の声がやっぱりどうしたって
いろんな音楽で耳に飛び込んでくるものだし。
まぁNO-MADでいうと
自分は声を出す側なんだが、
俺は、あまりにも非力だから、
もうなんかの要素が欲しいなっていうのは
ここ何年かずっと考えてる。

倉川:
とはいえ酒井さんの歌詞は
シンプルな言葉だから
飛んでくるっていうのはあると思います。
最近はどうしても
歌詞を細かくしがちだと思うんですが、
そうすると具体化しちゃうから
聞き手の方が想像できなくなる気がして。
でも酒井さんの歌詞って
シンプルな分かりやすい言葉を
何回も連呼したりするので、
その合間、聞く側で考える時間があるんですよね。
音の流れとの雰囲気とか
いろんなものが混じって
頭の中に絵が描かれるみたいな。

それは嬉しいな。
俺自身は自分の書く言葉は
そんなにいいとは思ってないんだ。
むしろ劣等感すらある。
まあ、声を出してみてこう言いやすいとか、
そのタイミングだとか。
同じ意味合いなんだけど
こっちの言葉の方が出やすい、とかね。
そういうのは考えては、いる。

それこそビット数どうのこうのじゃない

倉川:
酒井さんは常に
探求してる感じがありますよね。
何年、何十年もやってきたら、
“このぐらいかな”って
みんな言っちゃうと思うんですけど、
酒井さんはずっとFacebookとかで
俺の観点がってずっと書いてるから
まだ探求してるんだこの人、
すげえなと思って。

いや、思ったんだよ。
やってもなかなか伝わんねえなと。
俺の焦点がぬるいんだな。
いわゆるコンピューターの中に
音としてぶっこんでも、
そこがうまく出なかったりとかすんだよ。
自分がやった音と録った音が違うんだよ。

俺の大好きなギタリストで、
もう亡くなっちゃったんだけど、
大出元信さんって方がいらっしゃった。
その人のリズムギターが
ものすごくいいわけ。
古澤良治郎さん(Drum)、
大出元信さん(Guitar)、
川端⺠生さん(Bass)の
3人の作るリズムっていうのが、
ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ
匹敵するくらい気持ちいいんだ、
でも古澤さんとか
大出さんのスタジオで録った音って
なかなか目の前で生を聴いた感じに
聴こえないんだよ。
立体的で生き物みたいに
生々しく動く音なのに。
で、さて、自分のレコーディングでも
ギターで持っていくあの感じを
いかに出したらいいかって凄い課題で。
どっかでなんかまだ
マスキングがあるんだなっていう感じ。

倉川:
それはちょっと気づいたことがあって、
僕はPCMデジタルに関して疑念がずっとあって。
48kHzとか96kHzとかにしても、
その『間』のところの処理はどうなってるんだろう、って。
僕はなんだか勝手に解釈されて
前後に『Quantizeクオンタイズ』されているような感覚なんです。
PCMデジタルでの録音が主体になってから
EDMなどリズム、要は『縦のライン』が異様に整理されたような
音楽ばかりが支持されるようになった印象で。
Jazz とか クラッシック とか
『空間』とか絶妙な『間』を味わう音楽が
なんだか廃れて行ってしまった印象なんですよね。
それで僕はDSDデジタルに行ったんですけど、
DSDで録るとテープに近いようなフィールが出る感じで。
泰三さんのように絶妙なグルーヴ感を求める方には
はめちゃくちゃ良いのではないか、と。
奥行きもより情報量が多く出る印象で。

あ、それすごいね。
どうしても奥行きないもんね。
まあ、アナログにしてもいいかなとも、
だから思うけどね。
時代の流れにのって
デジタルのレコーディングになってたけど、
VUメーターとかテープコンプとか、
やっぱいいんだよな。
それを、やっぱりいいっていうことで、
残してないっていうのがね。
レコード業界は
全部ガーっと変えちゃったからね。
でもいいものっていうのは、
やっぱり継承していかないとね。

倉川:
余談なんですけどぜひウチ(bhodhit)で
レコーディングさせてもらいたいです(笑)

NO-MAD さんを若い子にもっと知ってもらいたい。

若い子が来て年齢層が広くなってくると
嬉しいよね。
一緒に演ってくれてる
バンドのメンバー皆凄いから。
今堀くんが弾いてる時、
何をどう考えてるか?
何やってんのかわかんない。
もう天才だから笑うしかないよね(笑)。
俺の曲はある意味
シンプルすぎちゃって。
で、違う意味での
複雑さがあるのは今堀君とか、
彼なりに演ってくれるからで、
だから最高なんだよ。
あの演奏がガーンと入って、
ニュアンスの幅を広げたりするのを
彼や皆が演ってくれるからね。

我々の先輩達、その前の人達は
情報量が少ない中で
飛び抜けてきた人達が多いじゃん。
それこそビット数どうのこうのじゃない
当然アナログでデジタルじゃなかったから。
16トラックどころか
8とか4トラックしかないとか。
2チャンネル1発とかモノラルとかさ。
一発録音ダビング無し、
そういう技術レベルの高い世界。
で、基本的に音が動く人たちが
選ばれてきてるわけでね。
だからもっと探して聴いたら
いいと思うしね。

録音物っていうのは紹介状でしかないから

倉川:
今の人達の感覚がいいんだなって思ったんですけど、
はっぴいえんどとかにいったりするんですよね。
細野晴臣さんのベース聴いたりとか。

細野さんの生音は
聴いたことないからわかんないけど、
基本的にすげえ音ぶっといよね。
でもさ、ほんとベースって
ぶっとい音が出ないとだめよ。
確かにスラップだとかいろいろ
習得するのは大変なのは
すごいよく解るんだけど、
でも基本的にはあの低音が
ぶわーっていかないと、
そういう音が出ないと
世界に行けないよね。

過去一緒にやったり聴いたりした
ビル・ラズウェルジャー・ウォブル
2人とも音がめちゃくちゃバカでかいし、
ものすごい低音なわけだよ。
もう、容赦ないわけだよね。
うわ、なんだこいつら、野獣か、みたいな。
そういうのが世界中
いっぱいいるわけだよね。
野獣になんなきゃいけないっていう
そういうあれじゃないけど、
低音っていうのは一体何かっていうのは、
ヘッドホンじゃわかんないんだよね。
だからライブとかで
すごいベーシストの音を聴くっていうのは
やったほうがいいよね。
ベースの帯域が下に落ちれば落ちるほど
音像はもう、世界は広くなるわけだから。

ラリーグラハムだとか
ルイス・ジョンソンだとかは
スラップとは当時言わなかったけど、
ぶっ叩いてんだ。
しかも音ぶっといよね。
スラップとかやるんだったら
もう、ぶったたかないとっていうかさ。

倉川:
音でかいですもんね。

ドラマーで言うと俺はバディ・マイルス
すごい好きなんだよな。
キックのドフっという感じが。
まあ、だからさ、ビートがいいと
俺は嬉しくなっちゃうんだよね。
で、そういうのをやりたいんだよね。
そうすると聴いてる人達も
エネルギー返してくれると思うし。

ドラムもさ、キックのビーターを
すぐ離してオープン、
押し付けてクローズ、
で音色使い分けるの、
山木さんで俺初めて知ったんだよ。
いかにこう気持ちよく鳴らすかっていう。

あと今まで
一緒にやらせてもらったドラマーで、
すごく印象に残ってるのが、
つのだ☆ひろさんと岡地曙裕さん。
エイトビートがすごく気持ちいい。
もっとやってって感じ。

ギタリストもそうだけど、
すっげえ気持ちいいビートをやってる
ベーシストもすごくいるんだよ。
だけど、知らなかったりとかするんだよ。
だから若い人達、
もっとそういうミュージシャンを
掘ってくれって。
すごく大事なことだと思うんだ。
こいつすげえイイのにみんな知らない、
そういうのは悲しいよね。

世の中、
同じ瞬間にいっぱいライブがあって、
どれを行こうかっていうのもあるし、
来てくれる人達のお金もあるし、
距離もあるしで、
出かけていくこと自体がね、
大変なエネルギーがいるし。
なんだけど、
できるだけ生で聴いておかないと。
ある意味、その録音物っていうのは
その紹介状でしかないから。
リアルな部分っていうのは、
やっぱり目の前でやってるその音だから。
で、それを知るか知らないとじゃ全然違うしね。

倉川:
今日インタビューしてわかったんですけど、
絶対一回じゃ終わらないです(笑)
毎月1個のテーマで語ってもらうっていうの
をコーナー化しましょう。

影響された曲とかね。
やりましょう。

倉川:
NO-MADは若い子にもぜひ見てもらいたいので
ぜひまたライブをやってください。

バクロスは5月にたぶんやると思う。
NO-MADはメンバーにまだ話してないけど
やりたい、とにかく。
若い子にも来てもらって体感してもらう。
AHちゃんは、僕は離したくないな(笑)。
ライブレコーディングもしたいし。
日本もそうだけど、
うん、例えば韓国とか台湾とかベトナムとか、
あっちの方に行ってみたいんだよな。
ヨーロッパもいいけど。
どこでもいいから日本以外のところでも
演ってみたいっていうのはすごくある。
で、それを記録して色々ミックスして、
みんな集まって見ようぜみたいな。
それ、やっていきたいな。

 

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