Ginza Sony Park
Ginza Sony Parkプロジェクトは、「街に開かれた施設」をコンセプトに50年以上にわたって銀座の街と歩んだソニービルを建て替えるプロジェクトです。
1966年、ソニーのファウンダーのひとりである盛田昭夫によってつくられたソニービル。
そこには、「街に開かれた施設」の象徴であり、盛田が「銀座の庭」と呼んだ10坪のパブリックスペースがありました。
私たちは次の50年に向けても創業者の想いを継承させたいと考え、「銀座の庭」を「銀座の公園」として拡張することで、銀座の街に新しいリズムをつくり、来街者の方が入りやすく、さまざまな楽しみ方ができる場にしようと、プロジェクトを進めてきました。
また、その建て替えプロセスもソニーらしくユニークに行いたいという想いから、これまでにない新しい発想で二段階のプロセスを採用。第一段階は新しい建物をすぐに建てず、ビルの解体途中(2018年8月~2021年9月)を公園にするという他に類を見ない実験的な試みをおこないました。
結果として、コロナ禍を含む約3年間で854万人もの方々に来園いただきました。
その後、第二段階として解体・新築工事を再開し、2024年8月にプロジェクトの最終形となる「Ginza Sony Park」を竣工、2025年1月26日にグランドオープン。
Sony Park 公式Webサイト・SNSアカウント
Instagram:https://www.instagram.com/ginzasonypark/
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@ginzasonypark #GinzaSonyPark
永野大輔氏 インタビュー
最後にバディットマガジンで
永野大輔氏に実施したインタビューをお届け。
すごくありきたりなご質問になりますが、新しいGinza Sony Parkがいよいよグランドオープンということで、率直に今どういうお気持ちでしょうか?
かっこいい言い方をしちゃうと、通過点でしかないっていう感じなんですよね。
なぜならば、オープン後にもまだやりたいこと がたくさんあるし、やらなきゃいけないこともたくさんあるので、まだ通過点というか、ゴールではないですね。
では達成感というよりは、目線は先に向いているのですね。
まさにそうですね。
2013年からこのGinza Sony Parkプロジェクトがスタートしているということで、その間にコロナウイルスや物価上昇など、世界情勢の大きな変化がありましたが、そういうことが起こるもしれないと想定してプロジェクトを進めていたり、また実際に起こって、その場で対応して計画を変えた、ということはありましたか?
12年間というと、生まれてから小学校卒業するまでの期間なので、色々なことがあるわけですよね。
ソニーの目線でいうと、2013年の頃は非常に業績が厳しい状況でした。
そこから2016年以降上向いてきて、今は非常に業績が良くなっています。
そういった意味ではネガティブなことではなくて、ソニーという会社自体がより良くなって来た12年間なので、プロジェクトも進めることができたというのは事実です。
実際に運営してみての変化については、自分たちでコントロールできないところの変化がやっぱり大きいわけです。
それは経済的な動きであるとか、あと1番大きかったのはやっぱりコロナですよね。
2018年から2021年までPhase 1としてGinza Sony Parkを運営していたんですけど、コロナの時期はここをクローズせざるを得なかったので、お客さまに楽しんでいただくことができなかったっていうのが1番残念でした。
ただ、コロナ禍でもオンラインでライブ配信をしたり、様々な工夫をしながら、どうやってお客さまと接点が持てるかトライすることができました。
そういう意味では、リアルだけじゃなくて、デジタルの領域でもアクティビティが成立するんだなとわかったことは良かったですね。
僕は自分でコントロールできないものに関しては先読みしすぎないスタンスでいるので、その時々の状況に合わせてプロジェクトを進めてきました。
Ginza Sony Parkの建築について、公園というコンセプトから着想したものなのか、まずはこういう建物を作りたいというところから始まったのか、どちらでしょうか?
公園です。公園だからこういう建物にしたい、というのは飛躍があるんですが、元々ここはジャンクション建築と呼ばれるように、交通の機能が複雑に絡み合ってるんですね。
ここを1歩出ると西銀座駐車場やメトロと繋がっていますよね。地上は数寄屋橋交差点に面しています。この都市機能と隣接・内包していることはまず避けられないんです。
設計する上で、公園というコンセプトがありながらも、絶対条件としてこの交通インフラと繋げなければいけないのが前提なんです。
わかりやすい例としては、銀座駅のB9出入口は、Ginza Sony Parkの中にあります。
そして、西銀座駐車場、地下鉄のコンコースと繋げるとなると、そこで床のレベルが決まってしまうんです。 なので、床のレベルが決まると、一定の構造が見えてきます。
そこで、その上にどのぐらいのボリュームの建物を載せるか?こういう順番になってきます。
全体を見た時に、公園というコンセプトとキャッチボールしながらチューニングをしていくという感じです。
SONYのネオンや青タイルなど、昔のものを残していたり、地下2皆の入口まわりは前とあまり変わっておらず、懐かしさを感じました。壁のコンクリートにもヴィンテージ感があったり、あえてPhase 1から残しているものはありますか?
あります。残しているものは多いです。
今仰っていた地下2階のファサードの部分は、Phase 1というよりも、ソニービルのままなんです。
あと、青タイルもソニービルのときのままです。厳密に言うと青タイルはソニーの敷地ではなく、東京都の敷地をソニーが管理しているんですが。
特に地下2階のファサードの部分は、残したということと、残さざるを得なかったという2つがあります。
後者の、残さざるを得なかったという文脈から話をしますと、ソニービルが建ったのは1966年で、隣の西銀座駐車場は1964年。前々回の東京オリンピックとほぼ同じタイミングで作られています。
地下2階のコンコースもそうなんですが、ソニービルと西銀座駐車場は繋がっているんです。
で、繋がっていると…例えば ソニービルと西駐車場への渡り廊下。設計図が残ってないので、どこでレーンが切れているかわからないんです。
なので、いざソニービルを壊す際、ガチャっと落ちてくるリスクがある。要は外堀通りの歩道が陥没するリスクがあるんです。
そのリスクがあったので、地下2階のファサードの部分は、ソニービルの躯体は残さざるを得なかったんです。
逆に言うと、これがあったから残せた。残せたことによって、創業者の1人である盛田昭夫さんが作ったソニービルの躯体を、次の世代に引き継ぐことができるというのがポジティブな考えです。
なので、地下2階に行くと、たくさんソニービル時代の名残があるんです。これは僕にとっては、歴史を引き継ぐための良い材料になっていて、とてもポジティブです。
だから新築ではありながら、地下はリノベーションに近いんです。
今いる地下3階は全部新築です。もうすでにエイジングしてるように見えるんですが、これは土木的なコンセプトで非常に荒々しくラフに作っているので、こういう表情になっています。
以前の『ヌーミレパーク(仮)』などで顕著だったと思いますが、すごくGinza Sony Parkのスタッフの評判が良かったかと思います。今後もスタッフの育成には力を入れていかれますか?
つい先日、スタッフ全員とミーティングをしたんですけど、とても重要なんです。
僕はブランドはお客さまの1番近いところで作られていると思っているので。
Ginza Sony Parkで1番お客さまと近いところにいるのはスタッフじゃないですか。
極端な話、アクティビティが面白くないと感じても話をしたスタッフがとても素敵だったら、多分Ginza Sony Parkの思い出って良くなるんですよ。
で、その逆もある。アクティビティがめちゃくちゃ良かったんだけど、スタッフとうまくコミュニケーションできなかったり、嫌な思いをしたら、Ginza Sony Parkの思い出は悪くなる。
そのくらいスタッフの役割はセンシティブで、ブランドに直結すると思っています。
僕はそのレイヤーを「ブランドインターフェース」と呼んでいるんです。
先日のミーティングで、あなたたちはブランドインターフェースなんですよと。
直接Ginza Sony Parkのブランド、ひいてはソニーのブランドに影響する重要な立場なので、もちろん楽しみながらやって欲しいんですけど、責任を持ってやってください、という話をしたばかりです。
僕はスタッフにすごく助けられています。僕が毎日現場に出られるわけじゃないので、僕よりスタッフの方がお客さまの顔を知っている。
スタッフがいなければブランド価値が上がっていかないと思っているので、僕の中ではアクティビティの企画と同じぐらい重要度の高いことです。
アンダー30を意識されているということで、Sony Park展 2025のアーティストもかなり若い人に人気がある方々と思うんですが、今後のアクティビティでもアンダー30を意識していかれますか?
しますね。ソニーが企画するものに関しては、そこは特に意識しようと思っています。
Phase 1のSony Park展から比べると、4組のアーティストが変わっています。
奥田民生さん、東京スカパラダイスオーケストラさん、岡崎体育さん、あとはMILLENNIUM PARADEさん。
その顔ぶれを見てもわかるように、年代が上の方に支持がある方も多いので、それを若い世代にシフトさせるため、今回ガラっと変えた感じなので、今後も意識していくと思います。
ただ、全部がアンダー30ではなくて、そうすると逆に画一的になりすぎてしまうので、あまり決めつけずに。
例えばPhase 1の時にQueenのアクティビティをやったりしたんですが、そういった世代にウケるようなもの。
また、Queenのようなアクティビティに若い世代が参加できるように。それはアーティスト側も望んでいると思うんですよね。自分たちのブランディングとして、アンダー30のような方々に見てもらえる。
Ginza Sony Parkでその場が作っていけたらすごいいいなと思います。
『#013 QUEEN IN THE PARK クイーンと遊ぼう』を開催中。QUEEN IN THE PARK オブジェのお出迎えにはじまり、彼らの楽曲を聴くだけではなく、楽曲の世界に入り込むような“体感”ができる場です。どうぞ全身で #QUEEN をご体感ください!https://t.co/G3OQFpPa8S#QUEENINTHEPARK #ginzasonypark pic.twitter.com/4VlR3qekJZ
— Sony Park(ソニーパーク) (@ginzasonypark) January 31, 2020
Park Liveもやっていかれますか?
やりたいですね。どこかでやりたいです。
やるとしたらどちらのフロアになりますか?
どのフロアでもできますよ。ただ、まだコンクリート が若いので、反響が結構あると思うんです。
坂本龍一さんのピアノはうまくできたんですが、バンドはちょっと厳しいかもしれないですよね。
まだ音の反響が多そうですね。
バンドは厳しいかもしれませんが、アーティスト次第ではどこでもできるかなと思います。
バンドでも、オンライン限定であれば反響もそこまで気にせずにできそうではありますね。
そうですね。お客さまを入れなければできそうですね。
最後に永野社長について。お話を聞かせていただいて、例えば建築や飲食など、幅広い見識をお持ちですが、普段から意識して知識を取り入れようとされているのでしょうか?
昔からデザイン、アート、建築、食、カルチャーに関しては、好きだったんですよね。
で、 それがずっと続いている。筋トレみたいなものです。
僕は、量が伴わない質は無いと思っているんです。
僕は50歳を超えていますが、それまで培ってきた量があるので、いわゆる質的変化が起こってるんですよね。
昔は美術館に行き、“よかったね、 面白かったよ、つまらなかったよ”。
映画やライブを観ても同じように思ったかもしれないんですけど、ある時、質的変化が起こって、それを自分で語れるようになるんです。
なんで良くなかったのか。なんで良かったのか。飲食だったら、これがなんで美味しいのか。なんで美味しくないのか。美味しくない理由はなんなのか。何が悪いのか。
それを解決するためにどうしたらいいのかってことが見えてくるんです。
いわゆる解像度が深くなってくるんですよ。それは今言ったデザインだったり、建築、アート、カルチャー、音楽、飲食というものを長年インプットしていった時に、どこかで質的変化が起こるんです。
で、プロジェクトをやりながらも、その変化が起こり続けてるんです。
なのでそれをイベントに変換する、ビジネスに変換するということができているのが今だと思うんです。
要は、プロジェクトリーダーをやりなさい、じゃあ美術館に行かなきゃね、ライブを観に行かなきゃね、もっと映画を観なきゃね、という感じではなくて、もうその前からやっているので、たまたまこのタイミングで重なった感じだと思うんですよね。
僕にも質的変化が起こったのがどの瞬間かは具体的にはわからないんですけど、いつの間にか仕事でもできるようになってきたという感じですかね。
その解像度というのは、例えば美術が好きな場合でも、音楽など様々な異なる要素を自分の中に入れていくことで、別の角度から見られるようになるのだと思いますが、やはりこれまで色々なものを見ていかれた中で、だんだん解像度が上がっていったのでしょうか?
その通りですね。質的変化と同じで、 “これとこれが重なっていく”というものがわかってくる。
特に現代アートなんかそうじゃないですか。“昔みたあの絵と似てるよね”というところから始まって、それはどの絵をモチーフにしているのか、それをなぜこう変化させているのか。
時には社会に対するアンチテーゼが入っていたり、もしくは何かオマージュが入っていたり。
そうすると、そのオマージュのネタになるものがわからなければ、理解できないわけですよね。
全部理解できるわけではないけど、理解できる量が増えてきたというか。
それはやっぱり1つのことだけではなくて、政治経済、社会、歴史など、複数のことを一定以上インプットしておくのは、解像度を上げるためには必要かなと思います。
だからといって僕はすごく詳しいわけではないので、専門家には知識では敵わないけれど、入口の部分は大概の話ができるので、ビジネスができているのだと思います。
逆に言うと、専門家じゃないからこういう飲食もできています。
1ページ目:永野大輔氏 プレゼンテーション、質疑応答
2ページ目:『Sony Park展 2025』などアクティビティレポート
3ページ目:Ginza Sony Park、永野大輔氏インタビュー