小室哲哉にとってのヒットの記憶とは!?

小室さーん、北村のマニアックなインタビューも是非今度受けてください!

近年はTM NETWORKのライブも精力的に展開、コンポーザー、プロデューサーとしても大活躍の小室哲哉。常にヒットメイカーとして期待される存在がゆえのジレンマや苦悩に、僕らにでもわかりやすいほど何度も陥っているところが逆に人間臭いというか親近感を抱けるところが面白い。もちろん数々の記録や賞を保持する日本を代表する作詞家、作曲、アレンジャー、プロデューサーでありながらこれまでに何度と復活劇を遂げてきた珍しい音楽家だ。

尋常じゃない浮き沈みを体験しながらも、小室哲哉は常にポップミュージックの未来を見て、自らのスタイルで切り拓いてきた先駆者である。そして小室哲哉が面白いのは、1980年代の渡辺美里への楽曲提供を契機に築き上げたスタイルを経て、1990年代以後は当時最先端のダンスミュージックに目を向けて、TRF「EZ DO DANCE」が発端となり空前のTKブームで席巻。大きく分ければ二つのブレイクポイントを持っている。このブレイクポイントを、「WOW」「Yeah」というキーワードで見極めたところは実に見事だ。

神原一光(かんばらいっこう)著により5月に小学館より上梓されるWOWとYeah 小室哲哉 ~起こせよ、ムーヴメント~は、小室哲哉の作曲、プロデュース論の集大成とも言える一冊になりそうである。

そもそも神原一光はこれまでに「NHKスペシャル」「天才てれびくん」「平成ネット史」「令和ネット論」など数々のNHKの看板番組を担当してきている。2022年に放送されたNHKの番組「インタビューここから 音楽家・小室哲哉」ではチーフ・プロデューサーとして番組制作に携わっていた。
番組放送後、そのリアクションに手応えを感じた小室哲哉だったが、“本にしましょう”というオファーを快諾。音楽家・小室哲哉がこれまでの音楽活動や制作で体験してきた知恵や独自の理論、実績を語り下ろすというテーマで追加取材が行なわれたのだが、そのインタビューは番組にプラスして10時間を超えたというから驚きだ。話しているうちに “何処かで封印していた想いや、記憶の端々が蘇ってきました。何を大切にしてきたか、誰に届けようとしてきたか、そんな事も見えてきました” とは小室談。
80年代~90年代初頭、様々な楽曲提供とTM NETWORKでの成功を通じて、「人々が振り向く音楽とは何か?」を学び積み重ねた成果が、その後のTRF篠原涼子H Jungle with t華原朋美globe安室奈美恵…といったミリオンセールスを生み出したわけだが、本書ではその中でもメガヒットを記録した20曲に着目。そのヒットの秘策を小室哲哉が語った内容に仕上がっているようだ。

【主な掲載曲】
My Revolution/GET WILD/survival dAnce~no no cry more~/BOY MEETS GIRL/CRAZY GONNA CRAZY/Masquerade/OVERNIGHT SENSATION ~時代はあなたに委ねてる~/恋しさとせつなさと心強さと/WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~/GOING GOING HOME/I BELIEVE/I’m proud/Hate tell a lie/DEPARTURES/Can’t Stop Fallin’in Love/FACE/Chase the Chance/Don’t wanna cry/You’re my sunshine/a walk in the park/CAN YOU CELEBRATE?/YOU ARE THE ONE

と、プレスリリースをもとにただまとめても面白味がないので(僕なりに面白くまとめたつもりだが)、僕が知る限りのコンポーザー小室哲哉の誕生劇を記そう。
Miss オレンジ・ショックBOY’S CLUBSERIKA with DOGらへの楽曲提供を経て、当時の岡田有希子のディレクター、國吉美織により小室哲哉はコンポーザーとして抜擢された経緯を持つ。
そのきっかけはTM NETWORKで「8月の長い夜」「TIME」「さよならの準備」の作詞を手掛けた作詞家・三浦徳子が、國吉美織にデモテープを聴かせたことにある。
國吉美織はその先進的なサウンドに驚き、岡田有希子への楽曲提供を小室に依頼したのだ。それが「Sweet Planet」、そして「水色プリンセス -水の精-」

1985年9月18日リリースのユッコの3rdアルバム『10月の人魚』の最初と最後を飾る名曲となった。アレンジャーは松任谷正隆なのだが、不思議と小室サウンドと言われても気付けないほどの出来であり、松任谷正隆も小室のデモは新鮮に受け取ったのだろうし、噂によれば奥方ユーミンも気に入っていたという。

その一方で佐野元春大江千里、TM NETWORK、渡辺美里、岡村靖幸などを手掛けた小坂班のプロデューサー、小坂洋二によりデビュー当時からの渡辺美里への楽曲提供オファーも受けていた。
小室哲哉は同年10月2日リリースの美里のデビューアルバム『eyes』で大活躍することとなる…が、タイトル曲「eyes」を手掛けたのが木根尚登だったという巡り合わせは面白い。
12月5日には『eyes』の中から「死んでるみたいに生きたくない」が3rdシングルとしてリカット。

この流れで生まれたのが『10月の人魚』『eyes』の翌年、1986年1月22日リリースの「My Revolution」。この曲を聴いたときの衝撃は忘れられない。透明感あふれる鍵盤アレンジやコード進行や転調劇など、それまで聴いたことがないタイプのロックだった。同様のショックを同級生で何人も受けていたし、同世代ならこのなんとも言語化が難しいこのショックがわかると思う。

「My Revolution」のヒットによりニューミュージックと称されていた音楽は過去のものとなったし、新たな日本語ロックの潮流が巻き起きて、僕らアラフィフ世代は明星、平凡からCBS・ソニー出版のGB、PATi-PATiに買い替えたのである。
個人的には「My Revolution」の次のシングル「Teenage Walk」(これも小室哲哉作曲)におけるドラムとベースのシンコペーションアレンジ、ピアノリフ、転調劇でもっともっと驚かされるのだけれども…。

『WOWとYeah 小室哲哉 ~起こせよ、ムーヴメント~』ではこうしたエピソードはもちろんのこと、シンセサイザーはギターサウンドに勝てないのか? ミリオンの「壁」に悩んだ日々、イギリスで見つけた「ダンスミュージック」という光明、なぜWOWとYeahを繰り返すのか?『Wow War Tonight』は吉野家で生まれた、YU-KIKEIKO――「地方の原石」を発掘できた理由、安室奈美恵『SWEET 19 BLUES』誕生秘話、TM NETWORK、宇都宮隆、木根尚登への特別な想いといった章立てでまとめられている模様だ…なんか内容的に網羅しすぎていてズルイ。

なお先行特典としては、ライブ会場およびHMV&BOOKS限定特典・TK特製しおり、初回配本限定の音声特典として「小室哲哉名言集」が付属するという。僕も死ぬまでにぜひインタビューしてみたいという小室哲哉だけに、こうしたアプローチの本が出てしまうのはかなり悔しい!…と同時に早く読んでみたいというファン心の間で揺れ動く日々である。

『WOWとYeah 小室哲哉 ~起こせよ、ムーヴメント~』

書名:『WOWとYeah 小室哲哉 ~起こせよ、ムーヴメント~
著:神原一光
発売日:2024年5月15日
定価:1,980円(税込)
体裁:四六判並製・256ページ
発売:小学館

 

 

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