僕が清浦夏実(きようら なつみ)の存在を知ったのは、FM NACK5「HITS THE TOWN」のゲストで彼女が出演したとき。すでにシンガーとしても女優としてもキャリアのある人でしたが、『十九色』という初のソロアルバムをリリースするタイミングだったのです。
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当時はビクターのFlyingDogレーベル所属でアニメ系の楽曲を歌っているシンガーだよなってなんとなくのイメージはあったのですが、その時にかかった「アノネデモネ」という楽曲にとてつもない衝撃を受けまして、これをいったいどうやってライブで再現するのだ!?っていう興味も含めて居ても立っても居られなくなり、まだ今のシャングリラになる前の変なハコ形態だった下北沢ガーデンに飛んで行ったのが初遭遇…もうライブを観てベタ惚れしてしまったのであります。
『十九色』ってアルバム自体がとんでもない傑作で、その当時の彼女のベストアルバムみたいなところもあったのですが、やはり「アノネデモネ」に衝撃を受けたポップファンは僕だけではありませんで、当時とても周囲で話題になったのです。
ちなみに作曲アレンジを手掛けたのがこれまた当時話題になっていた菅野よう子だったっていうのも興味を持った要因でもあります。
なので、坂本真綾に次ぐ存在になる娘なのかなってイメージもありました。僕はてつ100%のファンでもありますので、菅野よう子が時の人になっていたのにも大変驚いていたっていうのもあります。
てつ100%についても改めて語りたいのですが…。
期待のポップシンガーが出てきた!と僕のようなポップマニアなリスナーは清浦夏実に熱狂したのですが、シングル「ホログラム」でなぜか音楽活動を休止してしまいます。
この「ホログラム」もトルネード竜巻の曽我淳一が作曲アレンジの超名曲で僕は相当グッときていたのです。
清浦夏実本人も作曲する人ですが、この声色、歌唱力ゆえ、ソングライターはもう競うように絶対に間違いない曲を書くぞ!って気合が入ると思うんですね。
曲の書き甲斐のある存在というか、ゆえに清浦 夏実が歌っている楽曲って本当に駄作がないというか。それだけに、楽曲にこれほどまでに恵まれているのになぜ活動休止!?と納得いかなかった。
だがしかし、清浦夏実はシーンに帰ってくる。しかもまさかのかたちで…。
僕にとってやはりポップスターであり最強のマルチプレイヤータイプのベーシスト、コンポーザーである沖井礼二とTWEEDEESを結成。
Cymbals解散後(そろそろ再結成してもいい気もします)の沖井礼二は、FROGやSCOTT GOES FORとしてアルバムリリースしていたので沖井さん、それを並行してやっていくのかなと思っていました。
青野りえ、新井仁(NORTHERN BRIGHT)との相性も良くてそれはそれはよかったわけなのですが…新たなパーマネントバンドTWEEDEESが立ち上がるわけです。
しかもシンガーがまさかの清浦夏実! 清浦夏実ソロバンドでは沖井さんと親交の深いROUND TABLEの北川勝利がいたわけだし、近いと言えば近いわけでしたが、まさかこの二人が結びつくなんて思いもよらなかった。
僕のために結成してくれたのかと思うほどに狂喜したのです。
TWEEDEESは沖井イズム満載の音楽性、清浦夏実という圧倒的なパートナーを経たことで、作品リリースごとに新境地を開拓、その音楽はよりエスカレートすると共に洗練されていきます。
しかも面白いのはサウンド担当とシンガーの分担体制って部分もあるとはいえ、実は明確に分かれているわけではなくて結構二人がバトルしながらせっせと楽曲制作しているってところがわかってきた笑。
と共に、清浦夏実のボーカルアプローチなり多重コーラスのテクニックや精度が作品リリースのたびにどんどん上がってきて、それこそ「美しい歌はいつも悲しい」なんてまさかこんな曲を作るバンドになるだなんて想像がつかなかった。
もはやコアファンの想像や期待を超越する楽曲を生み出すバンドになっちゃったのです。「美しい歌はいつも悲しい」…楽曲としても新しいタイプですよね。
そしてモノクロで迫る清浦夏実の美しいこと!
そしてコロナ禍です。TWEEDEESもそのダメージを負ったバンドではあったのですが、『World Record』という現時点における最新アルバムで帰ってきます。
これも僕の大好きなアルバムです(もっともTWEEDEESには今のところ駄作などない)。
提供楽曲のセルフカヴァーも最高だったし、コラボレーション楽曲などとしての使命も押さえつつ、でもちゃんとTWEEDEESのオリジナルアルバムとなっていたのです。
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ただしこの時のインタビュー取材で実は結構いろんな葛藤、苦悩の中で作り上げたアルバムなんだっていうのも僕は知りました。
でもポップミュージックってそういうものです。完全ハッピーなモードの中で人の心を動かせるようなポップミュージックなんて作り出せるものか(笑)!
リリース当時はわからなかったけれども、時間が経った今となっては第一期TWEEDEESとしての締めの作品になったのかもしれないって気もしています。
その後のお二人ですがソロ活動に着手します。2023年には清浦夏実が久々のソロアルバム制作のためにクラウドファンディングを表明。
そして、沖井礼二はソロ名義としては初のソロ作となる『WONDER EXPRESS vol.1』を配信で発表。
これが沖井印満載の楽曲で、それでいて「Hot Rod,Cold Rod」はサーフインスト色をミクスチャーしていたりといった新境地も。
オルガンインスト「Winter Path」は後に歌詞が載って歌ものになるのだろうな…などと思いつつ、インスト作だったのは意外でもありました。
きっと『WONDER EXPRESS vol.2』もそう遠くないうちに届くのでありましょう。
と、前置きが長くなりましたが、3月15日にいよいよお目見えするのが清浦夏実の2ndソロアルバムになります。その名も『Breakfast』。
彼女自身で作曲して、いわゆるシンガーソングライター然とした作品を作るって方向性もあったと思うのですが、彼女が『Breakfast』で選んだアプローチは、旬のミュージシャン/クリエイターたちとのコラボレーションにより、シンガー清浦夏実の真価を提示してみせること。
アラフィフリスナーとしては結構知らないクリエイターの名前もあり冷や汗ではありますが、浦上想起、辻林美穂、Tomggg、やぎぬまかな(ex.カラスは真っ白)の作曲、アレンジによる、全く異なるタイプの楽曲が並んでいます。
参加ミュージシャンでは木暮栄一(the band apart)、北川勝利(ROUND TABLE)ら。
そしてMuhammad Iqbal作曲でRYUTistに提供された「無重力ファンタジア」はハヤシベトモノリ(Plus-Tech Squeeze Box)のアレンジ。
そういえばIkkubaruの存在も僕はTWEEDEESを通じて知ったのでした。
RYUTistもTWEEDEESファンじゃなかったら自発的に聴いてなかったかもしれないな。
RYUTistの「無重力ファンタジア」はMuhammad Iqbalがアレンジも手がけています。
これはこれで素晴らしいサウンドスケイプで、方向性的には清浦夏実のセルフカヴァーもそう決しては離れていないのですが、そのアプローチがなんとも絶妙なのです。
ウィスパーたっぷりのボーカルアプローチも素晴らしくて、こういうのはTWEEDEESでやる方向性とも違うし、なるほど、ソロでしかできないアプローチなのであります。
『Breakfast』の聴きどころの一つだと思うので、リリースをお楽しみに!という感じです。
実はいち早く拝聴していろいろ書きたくて仕方ないのだけれどもネタバレになっちゃうのもどうかと思うので…ただし、待った甲斐はありました。
冒頭「Illusion」のサウンドから衝撃的だったし、かと思えばラストナンバーであるタイトル曲「Breakfast」は意外にもバンドサウンドで、おいおいこれ沖井さん聴いたら嫉妬するのでは!?という凄まじい疾走感。
全5曲、多彩なアプローチで全力でぶっ飛ばしている夏さんが痛快です。
清浦夏実ファンなら『Breakfast』は待った甲斐あった!と思える仕上がりでしょう。
なおかつ、オーディオ的な意味合いでもとっても音質が良い楽曲が揃ったなと僕は思いました。
このサウンドスケイプの中で時に滑らかに、ハードに、そしてエモーショナルに歌い上げている清浦夏実の歌声が堪能できます。
いい意味でTWEEDEESと差異化しているアプローチでありつつも、タイトル曲は清浦夏実ならではのTWEEDEESへの挑戦かもしれない(笑)。
「さくら・フルール」は「アノネデモネ」の続編みたいにも聴けるし、コアファンであればいろんな楽しみ方ができるアルバムでしょう。
さらに4月にはリリース記念ワンマン公演「awakening」も決定。バンマスはレコーディングにも参加している北川勝利(ROUND TABLE) だそうなのですが、北川さんは先述の『十九色』ワンマンでもバンマスをやっていた人なんですよね。ってことでライブも期待大です。
さすがに『Breakfast』5曲だけでワンマンは成立しないので、『十九色』の楽曲なり過去のソロ曲なり提供曲セルフカバーも聴けるよね?…と大期待なのです。
そして、バディットマガジンでもインタビュー予定なのでこちらも乞うご期待!
清浦夏実『Breakfast』リリース記念ワンマン公演「awakening 」
2024年4月27日(土) 東京・LUSH
17:30開場 / 18:00開演
一般:前売4,500円(税込)ドリンク代別 / 一般当日5,000円(税込)ドリンク代別
学割:前売2,500円(税込)ドリンク代別 / 学割当日3,000円(税込)ドリンク代別
チケット詳細はコチラ