出会いがフラッシュバックする鈴木祥子のスタジオライブ盤

1988年9月21日、
僕の愛するレコードレーベル、EPIC・ソニーから
シングル「夏はどこへ行った」でデビューしたのが鈴木祥子

後にTHE BEATNIKSだったり
原田真二&クライシスをサポートしていた
ドラマーとしての活躍も知ったが、
EPIC・ソニーのカタログなら
一通りチェックしないと
気がすまなかった僕にとって、
鈴木祥子はちょっとお姉さんで
とても不思議な存在だった。

「夏はどこへ行った」もカップリングだった
波の化石(ファシル)」も
ほぼドラムレスな楽曲っていうのも、
片桐麻美を除けば珍しかったし、
その時点では女性ドラマーでもある
だなんて考えもしなかった。

が、翌月リリースの1stアルバム
ヴィリジアン』では「恋は罪
ベイビー・イッツ・ユー」などで
自らドラムプレイ。
(※後述しますが「ベイビー・イッツ・ユー」のドラムは藤井章司さんが正しい)

「夏はどこへ行った」とはまた違った
明朗なロックテイストで胸を鷲づかみされた。

ヴィジュアル的にも初々しかった
「夏はどこへ行った」のシングルとは異なり、
『ヴィリジアン』では全然印象の違う
赤のベレー帽を飾る美しい彼女がいて、
一ヶ月でここまで変わるか!という驚き。

僕のような祥子ファンは当時、
音楽雑誌をくまなくチェックして、
鈴木祥子の写真をゲットすることに躍起になったのだ。

不思議と『ヴィリジアン』の時点で完成していた
と言ってもいいほどの完成度。

それでいて面白いことに彼女は元から
シンガーソングライターを志していた音楽家ではなかった。

今となっては音楽の神に見そめられた人
としか言いようがないのだけれども、
当時のスタッフが歌うことを勧めていなかったら
今の彼女はいなかったかもしれない…

でも、やっぱりそれはないかな。

どうしたって世に出てきた音楽家だよな、どう考えても。

 

デビュー時は佐橋佳幸門倉聡
僕の好きなミュージシャンが
バックアップしていることもあって興味を抱いたし、
当時“NEO ACOUSTIC FRAGRANCE”という
タイトルだったと思うが、
EPIC・ソニーがネオアコをテーマに
安藤秀樹片桐麻美鈴木祥子遊佐未森
4組抱き合わせでキャンペーンもしていたので、
僕のようなEPICファンはすぐに夢中になった。

この4組もそれぞれ個性的
としか言いようがないのだけれども、
祥子さんの場合は当時歌詞を書いていた
川村真澄さんの世界観と絶妙なマッチングも魅力で、
2ndシングル「サンデーバザール」も
印象深かったせいかどこか
ヨーロピアンなイメージを勝手に抱いていた。

後にインタビューした際に知ったが、
「夏はどこへ行った」のデビュー時点では
ギターはほとんど弾けなくて、
それこそ佐橋さんの特訓で
弾けるようになったというから驚く。

Candy Apple Red』なり『SWEET SERENITY』の
キャンディアップレッド
フェンダー・ジャガーのイメージも強いから
意外に思う人も多いだろうが、
ギターというよりもむしろ元々はピアノ弾きだった。

この辺、レーベルでは後輩にあたる川本真琴も共通する点。

 

アコースティックな初期の世界観から始まり、
中期はオルタナテイストもものにしたり、
全部の楽器を自分でプレイする多重録音然り、
ハイファイからローファイアナログレコーディングも極めたり、
後に大滝詠一と出会ってナイアガラ・サウンドも追求…

祥子さんの音楽的冒険は常に興味津々で
個人的にどこかはまるポイントで共通項があった気がする。

僕に限らず熱狂的なファンが多いが、
意外とこの辺はみんな
そう思っているのではなかろうか。

常に美しく、ソングライティング面も
変化に富んでいつつ、サウンド共々研ぎ澄ましていくイメージ。

そして何より歌声の素晴らしさだ。

Hourglass』『鈴木祥子』あたりの
触れたら壊れそうな緊張感も印象深かったが、
作品ごとに変貌するウェットさやネイキッドさは
多々ありつつも、唯一無二のボーカルスタイルの魅力は常に素晴らしい。

デビュー35周年記念作品で届いた
歌う、聴こえる~そして10のメモワール』は、
大胆にもビクタースタジオにお客さんを招いての
スタジオライブ盤である。

近年の祥子作品でタッグを組んでいるのは
エンジニア中山佳敬

現在も制作が続いている
久々のオリジナルアルバムの完成が待ち遠しいのだが、
中山佳敬による音の臨場感は感動的だ。

マルチプレイヤー祥子さんなので
弾こうと思えばなんでも弾けたのだろうが、
設楽博臣 (g)、高野勲 (key) をバックに
あえて自身は歌に徹しているのが
『歌う、聴こえる~そして10のメモワール』のポイントと言える。

近年の祥子さんは歌う悦びにあふれているムードがあり、
そのままの歌声を録らえるべく
中山佳敬はSTUDER A827レコーダーによる
修正なしのアナログレコーディング。

なんならダイレクトカッティング録音のような
瑞々しい音が編まれており、しかも
Little Wing」「サンデーバザール」「ラジオのように」など、
EPIC時代の名曲が惜しみなく披露されているのがたまらない。

さらにこのレコーディングライブは第二部で、
第一部は同メンバーによる
夏はどこへ行った1988/2023」の
レコーディングの模様も公開された。

こちらのボーカル録音はブース内で行なわれており、
スタジオライブとはその辺を聴き比べてみるのも面白い。

それにしても驚くのは、
スタジオライブで水を得た魚のように
歌い上げている祥子さんのボーカルも凄く良いのだが、
「夏はどこへ行った1988/2023」の
35年振りのレコーディング。

原曲を踏襲したドラムレスアレンジで
設楽博臣、高野勲とのレコーディングなのだが、
輪郭のはっきりした太い音は
一つの到達点を感じさせるものだ。

原曲における佐橋さんのスライドギターを汲み取った
設楽博臣のギター、祥子さんのコーラス含む
オーバーダブこそされているが、
決して過不足感はない。

なんなら35年という時間の流れさえ感じさせない
透明感あふれる音と歌声であり、
こんな作品が作れるのは祥子さんぐらいだろう。

正直、セルフカヴァーって
原曲を超える意義のあるものを生み出せるって
ほとんど不可能だと僕は思っているのだが、
「夏はどこへ行った1988/2023」は
殊更に差異化を意識するといった加減もなく極めて自然だ。

原曲偏愛者ほどなんなんだこの透明感は!
と悶絶してしまう音の説得力…

ちょっと今まで感じたことがない感覚だったのである。 (北村和孝)

『歌う、聴こえる~そして10のメモワール』CDジャケット アーティスト:鈴木祥子
アルバム名:『歌う、聴こえる~そして10のメモワール
発売日:2023年4月21日(金)
レーベル:BEARFOREST RECORDS
規格番号:BECD29
EAN:2299991260268
フォーマット:Compact Disc (CD)
価格:3,500円 (税込)
NRSD-3116_8cm_SINGLE_JACKET アーティスト:鈴木祥子
アルバム名:夏はどこへ行った1988/2023 ↗️
発売日:2023年8月21日(月)
レーベル:なりすレコード / BEARFOREST RECORDS
規格番号:NRSD-3116
JAN:4582561400001
フォーマット:8cm Compact Disc (限定版 短冊CD)
価格:1,650円 (税込)

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【お詫び・訂正】(※2023/7/28更新)

ファンの方よりメールいただき、
「ベイビー・イッツ・ユー」のドラムは
故・藤井章司さんだというご指摘が…

そうでしたm(_ _)m。

僕の神である土屋昌巳さん擁する
一風堂のドラマー章司さんに
いわば師事していたのが祥子さんになる
ということでそれも僕にとって
勝手に縁を感じた重要な要素でした。
この場にてお詫びと訂正させていただきます。

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