ファッションの定義とは、流行の服やモノ、スタイルを意味する。
めちゃくちゃ気に入って買った洋服のはずが、1年後には古臭い、時代遅れ、なんか着たくないとそんな気分に陥ってしまい、次から次へと新しい服が欲しくなってしまう現象は、服好きあるあるではないだろうか。
いわゆる“ファッションの呪い”である。
それは時代、流行、自分が絶えず変化しているので、当然といえば当然であるのだが、
そんな色んな流れは全く気にしない、いわゆるタイムレスに残り続けるものは、それぞれ自身の中で存在するのではないだろうか。
30代に入って、昔よりめっきり服を買わなくなった僕だがこれは多分、手放さないだろうな(多分)ってモノを不定期で紹介させていただきたい。
ということで、僕の独断と偏見マシマシで選んでみました。
まず第1回はこちら
Thing of remain 〜Part.1〜
30’s USCG デニムジャンパー
第二次世界大戦中、作業用として使われたボタンフロントのデニム生地のジャケットである。
今までに数多のブランドがサンプリングし、レプリカやアレンジ物が数多く存在するが、やっぱりオリジナルの生地感は最高。
USCGとはUnited States Coast Guardの略で湾岸警備隊のこと、日本でいう海上保安庁みたいな存在。
よく古着屋で見かけるのは、ほぼ同型のUS NAVY(アメリカ海軍)の物が多い、CGの方が兵数がNAVYに比べて圧倒的に少ないので、必然と流通量は少ないみたい。
値段もNAVYの方が安いので、どうしてもCGじゃなきゃ嫌!という人はあんまりいないと思うので、ファッションとして楽しむならそちらで十分かも。
男臭い、ラギットなアイテムばかりのミリタリー物が多い中、どこかキャッチーな風貌をしているこのジャケット。
日本では通称、へちま襟ジャケットと呼ばれており、1930年代に製造されたモノ(もしかしたら40年代かも)で、1920年代にアメリカ海軍で採用され始めた。製造は恐らく、カリフォルニア州にあったメーカー。
これよりさらに前の1910〜20年代前半だとプルオーバータイプや3つポケのカバーオールタイプがある。
そっちは殆ど市場に出ない、ミュージアムピースとなっている。
他にも同型でヒッコリーストライプ生地のタイプがあり、そちらはPrizoner wear、
つまり囚人服として流用されていた。フロントにはPWと大きく描かれ、遠くからでも分かる様にヒッコリー生地になっていたみたい。
そのタイプが一番市場価値が高く今だと、40万くらいする。このデニムタイプは1950年代頃まで採用され、その後は一般的なカーキー色のミリタリーウェアへと変わっていった。
ダンガリータイプもあるのか、そう記述している所もある。
特徴はやっぱりこのセーラー襟で、当時は甲板上で作業する際に着用されていた。
カーブを描いた襟は、風が強い海上で強風に晒されても、影響を受けない、風を受け流すような目的にでこの形になったみたい。
ボタンは取り外し可能なチェンジボタン。
正式にはシャンクボタンと言い、これは洗濯機が普及していない時代、まだ洗濯板でゴシゴシ洗濯していた頃の服に多いディテール。
ヨーロッパよりアメ物のほうが、洗濯機の普及が早かったので、チェンジボタンの廃止が早い様に感じる。
陸軍ではノルマンディー上陸作戦の頃には大型の洗濯機が採用されていたらしいが、海上ではどうだったのだろうか。
ゴシゴシ手洗いというか、バケツに水を溜めて、雑巾を絞る様に洗濯している写真を見たことがある。
洗濯当番みたいな係がいて何十人もの洗濯を洗っていたのだろうか。
袖は筒袖で可動域が広く動かしやすいサイズになっている。
裾には菊穴があり、これは何故付いているかというと、今では当たり前の物干し竿やハンガーがない環境で、菊穴にロープを通して干す目的で付いていると説が濃厚だ。昔の写真を見ると、大きいロープに小さいロープを組み合わせて、何でもかんでもそれに通して干している。
また年代によって、ボタンの種類が変わっていき、チェンジボタン→13星ボタン→縫い付けの樹脂ボタンとそこでざっくりと年代判別ができる。
生地の厚みは10.5ozのライトオンスなので、薄めで春秋向けで、その時期はアウターとして、冬はインナーとして使うといい感じかも。
と蘊蓄はこの辺にして、なんといってもこの面(ツラ)の良さ。90年近く前の物とは思えない普遍的なデザインは、現代のファッションとも何ら違和感なく混じるので、デザイナーズ物なんかと合わせて、楽しんで欲しい。
Levi’sやLeeなどのデニムブランドと比べると、まだ手を出せる価格帯なのもポイントなので、ぜひ見つけたら手にとってみて欲しい。