篠原涼子 with t.komuro『恋しさと せつなさと 心強さと』もアナログレコードに!

『恋しさと せつなさと 心強さと』(篠原涼子 with t.komuro)

90年代にEPIC・ソニーが送り出した東京パフォーマンスドールのメンバーアイテムとしては市井由理「恋がしたかった」に続くかたちとなるのかな?

市井由理の名作シングルが初7inchアナログレコード化
東京パフォーマンスドールの中でも EAST END×YURI のラッパーとして活動したりと、クラブシーンで注目を浴びた市井由理の名作シングル「恋がしたかった」が初の7inchアナログレコード化! プレミア化の可能性も!? ご予約はお早めに!

かの篠原涼子が小室哲哉とのタッグで1994年、シーンを席巻した大ヒットシングル、言わずと知れた『恋しさと せつなさと 心強さと』がリリース30周年(ついこの間かと思っていたらもうそんなに経つのか…)を祝して、なんと7inchアナログレコードとして7月21日にリイシューされます。ちなみに女性シンガーのシングルで200万超えのセールスを記録したのはこの曲が初でした。そんな篠原涼子のシングル遍歴は面白くて、2ndシングル「スコール」はGONTITIのゴンザレス三上の作曲、編曲で見事にEPIC人脈。変則ボッサポップでちょっぴり実験的な仕上がりでした(僕は大好きですが!)。

続く「Sincerely」は松井五郎作詞、中崎英也作曲でこの辺から本格的にヒットを狙い始めた感じがしたのですが、東京パフォーマンスドールのメンバーは歌唱力に比較的恵まれた中でも、凛とした特徴的な歌声だったのが篠原涼子でした。

元々、東京パフォーマンスドール立ち上げ時、小室哲哉を音楽監督に起用しようというアイデアがあったのですが、当時の小室哲哉は最先端のクラブミュージックを日本語ロック、ポップスと融合することに夢中だった時期で、いわばAVEXチームとの制作を望みEPICからのレンタル契約になっていました(まぁ、以前丸山茂雄さんにお話しいただいたこの逸話も面白いのですが別の機会に…)。これが契機となり1993〜94年におけるtrf「EZ DO DANCE」のロングセールスを起爆剤にTKブームが起きます。「EZ DO DANCE」と共に起爆剤となったのが『恋しさと せつなさと 心強さと』でした。作詞作曲編曲、全て小室哲哉で、あなたへのエールソングであるとともに、戦うことを決意した強い女性像をも描いた内容が、とりわけ女性ファンの心に響いたと共に、カラオケブームも追い風になりました。サウンド的にはダンサブルな印象でありつつも、ビート感はTM NETWORKの作風に近いロックテイストなのもかっこよかった。宇都宮隆さんがカヴァーしたらまんまTMになると思います。僕としては特になぜかさらに転調するエンディングパートが好きです。1991年よりTV番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』に出演していたことで徐々にお茶の間に存在が浸透してきた彼女にとって、まさに待望のヒットシングルだったのでした。そしてシングルリリース二ヶ月後に彼女は東京パフォーマンスドールを卒業します。

以後のシングル「もっと もっと…」「Lady Generation」もTKプロデュースで、名作アルバム『Lady Generation 〜淑女の世代〜』もやはりTKプロデュース、小室哲哉と久保こーじの作曲、アレンジで大ヒット! 思えば篠原涼子のプロデュースのノウハウがその後の華原朋美や安室奈美恵のプロデュースにもつながった気がします。でも不思議なことに篠原涼子のオリジナルアルバムは『Lady Generation 〜淑女の世代〜』、その前に出た『RYOKO from Tokyo Performance Doll』だけなのです。

シングルはその後も断続的にリリースされていったのですが、オリジナルアルバムに発展しなかった…一時はちゃんとリリース予定されていたのにも関わらずたち消えになってしまったのでした。女優として大成功したとはいえ、シンガー篠原涼子でTK以上の成果が出せなかったというのはなんとも残念ではあります。東京パフォーマンスドールはその後のグループアイドルブームの先手で、1993年に日本武道館2デイズ、1994年に横浜アリーナ公演を行なう実力もあったのに(グループアイドルでこの規模を実現したのはCoCo以来でした)、どういうわけかお茶の間にまでは浸透しなかった。不幸なことにグループアイドルの復権は1997年のモーニング娘。に持っていかれてしまうのです。さらに言うと東京パフォーマンスドールの方法論自体をうまいことセールスに結びつけたのがかのAKB48でありました。秋葉原ではなくて、原宿ルイードを拠点にライブステージをするグループアイドルではなぜ大きくブレイクできなかったのだろう? …なんなら近年活動していた第二期もやはり同様の経緯をたどった…いや、第一期に大きく水をあけられた形で無期限活動休止してしまった。…謎だ。

なお『恋しさと せつなさと 心強さと』は、2023年に『恋しさと せつなさと 心強さと 2023』としてニューレコーディングされたのも記憶に新しいところ。TVで小室哲哉との久々の共演も叶ったのです。7inch化もされたので、オリジナルよりも先に『恋しさと せつなさと 心強さと 2023』がアナログレコード化されていたのである…というわけで、オリジナルの7inch化は僕のようなファンには待望と言えるのでした。蛇足だけれども、僕には『恋しさと せつなさと 心強さと』でひとつ思い出がある。このシングルが出たのが僕の大学時代、足代だけ出るような音楽番組のエキストラのアルバイトをしていたのだが、渋谷のスクランブル交差点にいきなり篠原涼子が登場して、サプライズで『恋しさと せつなさと 心強さと』を歌うという企画があって、その篠原涼子を隠す役をやったのだ(笑)。三千里薬局前ら辺だったと思う。お立ち台にうずくまっている篠原涼子をカバーで覆って、それを取るっていう感じだったかな? 僕にとって今のところ? 最大の篠原涼子さんの接近遭遇の機会でありました…。

リリース情報
『恋しさと せつなさと 心強さと』(篠原涼子 with t.komuro)
発売日:2024年7月21日
品番:MHKL-81
価格:¥2,200
仕様:45RPM、STEREO、完全生産限定盤
購入はこちらから
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北村和孝の音楽エッセイ「楽興のとき」新譜情報総論EPIC・ソニー邦楽音楽
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投稿者
北村和孝

埼玉県西川口出身、現在も在住 (あるいは西新宿の職場に籠城)。
元はSSW志望だが90年代後半にrhythmagicを立ち上げて鍵盤やギターもプレイ。
新宿ヘッドパワーを拠点にバンド活動やイベント企画も2010年代まで行なっていた。
大東文化大学卒業後、音楽雑誌Playerに入社。2018年より編集長に。
『高見沢俊彦Guitar Collection 500』『高崎晃Guitar Collection』などの大型写真集、
まるまる1冊女性ミュージシャンで構成した『魅惑のMuses』などの別冊も手がけた。
惜しくも2023年7月で音楽雑誌Playerが休刊となり、フリーの編集者として再スタート。
自ら撮影、取材、インタビュー、執筆するDIYスタイルで洋邦問わず80〜90年代ロックを主体に、
ジャズ/フュージョン、ラジオ、サブカル関連を日々追い続ける。銭湯も趣味。
2024年早々、敗血症ショックで救急搬送されてご迷惑をおかけしましたが回復しつつあります!もう大丈夫!

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