高橋幸宏のライブ『Saravah Saravah!』が映画館公開

『SARAVAH SARAVAH!』について

2023年1月11日、70歳でこの世を去った高橋幸宏
僕個人としてはそれほど取材の
チャンスがあったわけではないが、
鈴木慶一とのTHE BEATNIKS新譜で取材が実現、
そして唯一のソロインタビューが実現したのが
2018年だった。
ソロデビュー40周年のタイミングであり、
ソロデビューアルバム『SARAVAH!』
サウンド部分を抽出、ヴォーカルトラックのみを
今の高橋幸宏スタイルで差し替えることで生まれた
『SARAVAH SARAVAH!』についての取材だった。

 

オリジナルのマルチトラックから
演奏部分を取り出せたのも今の時代の
テクノロジーゆえだったが、
当時は打ち込みなど初期の初期段階もいいところで
レコーディングは人力の時代。
幸宏と坂本龍一の共同プロデュースで作られた
『SARAVAH!』のサウンドはフィジカル的にも
凄まじいバンドサウンドが堪能できる。

教授が書いた「ELASTIC DUMMY」
クロスオーバーフュージョンの傑作の一つ。
後聴き世代としては後の作品と比べると
幸宏唱法の固まっていないヴォーカルが弱いと
思っていたアルバムだっただけに、
ヴォーカルを録り直されただけで
新譜に聴こえるようなショックがあった。
と同時に、YMO結成前夜のアルバムで
細野晴臣もベースで全面的に参加している。
と書くと、それがさぞや特別のようにも感じるが、
YMO御三方が参加しているクレジットのアルバムが
あちらこちらで見受けられるのが1978年という年だった。

ギターはほぼ鈴木茂松木恒秀だが、
サディスティックスの活動中だったので高中正義
「PRESENT」で参加していたり、
意外なところだとPRISM和田アキラも参加。
先述の「ELASTIC DUMMY」で
山下達郎 & 吉田美奈子がコーラス参加していたりもする。
『ガーディニア』以後、幸宏、教授らの起用が
多くなっていく盟友・加藤和彦も参加。
「LA ROSA」の楽曲提供のほか、『SARAVAH!』の
ヨーロピアンテイストの作風には加藤和彦の影響も感じられる。

 

個人的には十代の頃『SARAVAH!』も聴き込んだが、
今は『SARAVAH SARAVAH!』が
一つの完成形に感じるアルバムとなっている。
同様のアプローチでは角松敏生『SEA BREEZE 2016』
好きなアルバムだが、聴き手が青春時代に
聴き狂ってきた歌を録り直すセルフカヴァーというのは
相当難しい手法だと思えるので、
こういうのってほとんどレアな成功例だなと思った。

この『SARAVAH SARAVAH!』リリースを祝して、
2018年当時、東京国際フォーラムホールAで行われたのが
「YUKIHIRO TAKAHASHI LIVE2018 SARAVAH SARAVAH!」である。
今思えばこれに行けたのは本当にラッキーだった!
たしかこの前日が南佳孝のライブだったはずで、
それも含めて結構話題となったライブだ。
ドラムには一部幸宏自身とともに、
「LA ROSA」にパーカッションで参加していた林立夫
教授の超絶鍵盤プレイを引き継いだのがDr.kyOn斎藤有太
ベースではこの方も世を去ってしまったが
有賀啓雄、ギターに佐橋佳幸。個人的には矢口博康(Sax)
ゴンドウトモヒコ(Ehpho, Computer, etc)
参加しているのも面白かったし、重住ひろこ、岡村玄、
ツヤトモヒコのコーラス、さらにはTHE BOOM
パーカッションで活躍していた藤井珠緒(per)
久しぶりに観られて嬉しかった。
ゲストで細野晴臣が登場する一幕もあり、
教授のビデオコメントも流れた。

『SARAVAH!』の楽曲のほかにも
当時の楽曲が一部披露されたのだが、
「POISSON D’AVRIL/四月の魚」
なんとこの時が初披露であり、
おそらく唯一の披露になったはず。
自身の主演映画『四月の魚』用に製作した楽曲だが、
この映画の方をご本人納得してないっていうの
が囁かれてきたこともあり、
ちょっとしたサプライズではあった…
名曲には間違いないのだけれども。
その後2019年、『YUKIHIRO TAKAHASHI LIVE 2018
SARAVAH SARAVAH!』はCD+DVDで作品化も叶った。

『SARAVAH SARAVAH!』が映画館で上映!

この模様が2024年1月19日(金)~1月28日(日)
109シネマズプレミアム新宿にて
映画館上映されることが決定。
今見返しても最高のステージングであり、
大画面と映画館の音響で堪能できるのは嬉しい機会だ。
聞けば109シネマズプレミアム新宿の音響は、
坂本龍一が監修したサウンドシステムというのも因縁めいている。
さらには高橋幸宏が晩年、居を構えていた
軽井沢での四季を追った日々の
ショートムービーも上映されるほか、
1月19日(金)には佐橋佳幸×飯尾芳史×ゴンドウトモヒコ
24日(水)祐真朋樹×鈴木正文×青野賢一
そして28日(日)には鈴木慶一の上映前の
トークショーも決定。
YOHJI YAMAMOTOとのコラボTシャツや
撮り下ろしのポストカードなどオリジナルデザインによる
各種グッズの販売も予定されているのでこちらも楽しみにしたい。
(北村和孝)

イベント情報

『YUKIHIRO TAKAHASHI LIVE2018 SARAVAH SARAVAH!』
2024年1月19日(金)~1月28日(日)109シネマズプレミアム新宿

チケット情報
CLASS S 6,500円/CLASS A 4,500円
※トークショー開催時は、CLASS S 7,000円/CLASS A 5,000円となります。

タイトルとURLをコピーしました